スーパー英2位のセインズベリーは4月30日、米同業ウォルマート傘下で英3位のアズダを買収することで合意したと発表した。取引額は約73億ポンド。取引が実現すれば、市場シェアで長年にわたり首位に立つテスコを抜き、業界最大手に躍り出る。
ウォルマートは、統合後の新会社の発行済み株式42%を取得するほか、現金で29億7,500万ポンドを受け取る。ウォルマートが取引完了後に保有する議決権付き株式は29.9%となる。新会社のトップにはセインズベリーのマイク・クープ最高経営責任者(CEO)が就き、セインズベリーとアズダの両ブランドを維持する。セインズベリーとアズダの店舗数は合わせて2,800店舗に上り、年商は合計510億ポンドに達する。
英国の小売業界では、独系格安スーパーのアルディやリドルがシェアを急速に伸ばしているほか、米オンライン販売大手アマゾンが食品分野の強化を進め、テスコも英食品卸売最大手ブッカー・グループの買収で立ち位置を強めている。セインズベリーは、アズダの統合によりコスト削減や購買力を強化し、こうした競争に立ち向かいたい考え。セインズベリーは統合後、多くの日用品の価格が約10%引き下げられるとしている。
英競争・市場局(CMA)はこの日、セインズベリーによるアズダの買収は調査の対象となるとの見方を示した。最近の英国の小売業界の競争状況から、承認のハードルは下がっているとみられている。しかし、取引実現に向けては店舗網の最大15%を売却する必要がある見通し。なお、セインズベリーの株式22%を保有するカタール投資庁(QIA)は既に、取引を支持する方針を示している。
ウォルマートは1999年に67億ポンドでアズダを買収。しかし、過去5年はアルディやリドルとの価格競争に押され業績を伸ばせずにいた。今回の取引を契機とし、ウォルマートが将来的に英国市場から撤退すると見る向きもある。同社は2年間のロックアップ(一定期間は持ち株の売却を禁じる取り決め)期間を経て、出資率を29.9%から引き下げることが認められ、4年後には出資を完全に引き揚げることが可能となる。
■通期は4年ぶり増益
セインズベリーは併せて、2017/18年度(3月10日までの52週間)の税引き前利益(特別損益除く)が5億8,900万ポンドとなり、前期比1.4%増加したと発表した。4年ぶりに増益を達成した。
売上高(VAT含む)は9%増の317億3,500万ポンド。既存店ベース(ガソリン除く)でも1.3%増加した。分野別では、コンビニエンスストアが7.5%伸び、食品のオンライン販売は6.8%拡大。スーパーマーケットは0.5%の増収にとどまっている。
同社は当期にコンビニエンスストア24店舗、スーパー3店舗を新設。期末時点の総店舗数はコンビニエンスストアが 815店舗、スーパーが608店舗となっている。
セインズベリーは今年について、特別損益を除く税引き前利益が市場予想に沿った6億2,900万ポンドになるとの見方を示した。[M&A]
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