政府は9日、イングランドとウェールズを対象とした総額4,000万ポンドの凶悪犯罪対策を発表した。地域ぐるみで若年層の犯罪防止に取り組むほか、犯罪の要因となっている麻薬組織の摘発を強化するなど、早期介入と予防に重点を置いている。背景には、ロンドンで銃やナイフによる殺傷事件が急増していることがある。
同対策では、若年層が犯罪に手を染めるのを予防するための地域プロジェクトに1,100万ポンドを投じるほか、凶悪犯罪の主要因となっている麻薬「クラックコカイン」の摘発に向け、360万ポンドを投じて麻薬の販売ルートに沿った捜査の調整機関を新設する。また、こうした措置の効果的な実施に向け、ボランティア組織や地方自治体、警察などから成る凶悪犯罪タスクフォースを結成し、ラッド内相が陣頭指揮をとる。
ロンドンでは今年に入り、殺人事件の被害者数が累計で51人と、通年で116人(テロ被害者を除く)だった昨年を大幅に上回るペースで推移している。最大野党・労働党はかねて、保守党政権の緊縮財政により警察官や保護監察士が削減されたことが原因と批判している。
また、BBC電子版がこの日、内務省から入手した内部文書を元に報じたところによると、同省自体も2月にまとめた報告書で、警察官の削減が犯罪を促した可能性があると認めていた。ただ、ラッド内相はこれについて「凶悪犯罪は複雑な犯罪であり、警察官の数だけで決まるものではない」とコメントしている。
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