エンジニアリング関連の英投資会社メルローズ(Melrose)・インダストリーズは19日、かねて取得を目指している英自動車・航空部品大手GKNの年金基金に最大10億ポンドを拠出すると発表した。年金を巡る懸念を解消し、買収にこぎ着ける考え。一方のGKNはこの日、ドライブライン部門を米自動車部品大手デーナ(Dana)と事業統合した後の新会社をニューヨークだけでなくロンドンでも上場すると発表しており、対抗姿勢を強めている。
メルローズは先に、GKNへの提示額を総額81億ポンド、統合後のGKN側の出資比率を60%にそれぞれ引き上げ、これが最終案だとしていた。だがGKN経営陣が引き続き拒否している上、年金当局や議員が年金基盤の弱体化を危惧して取引阻止を訴え始めたため、年金への拠出額引き上げを条件に追加。デーナとの取引の一環として、GKNが信託会社と合意している5億2,800万ポンドの年金債務削減パッケージの約2倍だと訴えている。
GKNとデーナ側は対抗措置として、ロンドンでの上場計画を公表。統合から3年後のシナジー効果は1億7,000万ポンドに達するとの見方を示した。ニューヨークだけで上場した場合、英国の一部投資家は株式を保有できないとメルローズが非難していたことが背景にある。
なおメルローズは今回、50%超の株式取得を株式公開買い付け(TOB)成立の条件とし、従来の90%から引き下げた。TOBは3月29日に締め切られる。
GKNの航空宇宙部門の最大顧客である欧州航空・防衛最大手エアバスは、今回の買収合戦を懸念し、「もしメルローズの取引が成功した場合、新規契約を結ぶことは実質的に不可能」との声明を発表。GKNもこれに同調し、「メルローズはGKNの親会社にふさわしくない」と強調した。
なお欧州委員会は先に、メルローズのGKN買収計画を承認。メルローズの株主も既にこれを承認している。[M&A][労務][EU規制]
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