欧州連合(EU)と日本は8日、経済連携協定(EPA)を巡り、投資の保護基準や紛争解決を除く関税分野での交渉を終えたと発表した。ユンケル欧州委員長と安倍首相がこの日朝に電話会談し、今年7月の大枠合意に基づく交渉内容の妥結を確認した。今後、正式な協定文の作成に入り、2019年の発効を目指す。
日・EUの経済規模は全世界の国内総生産(GDP)の30%近くを占め、人口も合わせて6億人を超える。EPAの発効により、世界最大の自由貿易圏が形成されることになる。ユンケル委員長は「EUと日本はオープンかつ公正で、ルールに則った貿易を守る力強いメッセージを発した」とコメントしている。
EPAは、EU側が輸出入品目の99%、日本側が94%の関税撤廃を実現すると期待されている。ただ、焦点となっている日本車とEUの農業製品については、長期の移行期間が設けられる見通し。例えば日本車に対する10%の輸入関税は、協定発効から7年をかけて撤廃される。一方、日本はEU産のハードチーズについて15年以内に30%の輸入関税を廃止するほか、ソフトチーズや生チーズの輸入では現在の輸入量を上限に無関税化する。
このほか、サービス・投資の自由化、政府調達拡大による市場アクセスの改善に加え、知的財産や電子商取引(eコマース)、コーポレートガバナンス(企業統治)、貿易と持続可能な開発、規制協力、農業協力など幅広い分野での新しいルールの構築で基本合意に至っている。
焦点となっていた投資保護の基準を巡っては、日本が「投資家対国家の紛争解決(ISDS)」の採用を求めているのに対し、EUは「投資裁判所制度」の導入を主張。欧州委員会は2015年以降、ISDSは貿易交渉の障害となるとして、国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)をモデルとした常設の国際法廷の設置に向けた準備を進めている。
両者は今回、この問題をEPAから切り離した上で、今後も協議を続けていくとしている。併せて、戦略的パートナーシップ協定(SPA)の早期締結に向けても協力する方針だ。[EU規制]
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