欧州委員会は9日発表した秋季経済見通しの中で、今年のユーロ圏19カ国の実質域内総生産(GDP)が前年比2.2%拡大するとの見方を示した。5月時点の予測から大きく0.5ポイント上方修正した形で、来年も高水準を維持するとみる。一方、欧州連合(EU)離脱を控える英国については、見通しを引き下げている。
欧州委はユーロ圏経済について、個人消費の底堅さや世界経済の回復、失業率の低下を背景に、予想を著しく上回る好調ぶりを見せていると指摘。低金利や景況感の改善が追い風となり、投資は加速していると分析した。一方、賃金は緩やかな伸びにとどまっており、インフレも停滞するとみる。また、下振れリスクとしてブレグジット交渉や欧州単一通貨ユーロ高などを挙げつつも、不透明感の解消や見通し改善により、予想以上の成長を達成する可能性もあるとしている。来年の成長率見通しは2.1%と前回の1.8%から引き上げており、ブレグジット交渉が終了する2019年は1.9%にやや減速するとみる。
EU加盟28カ国のGDPは、今年は2.3%、来年は2.1%拡大すると予想。5月時点の予測からそれぞれ0.4ポイント、0.2ポイント上方修正された。
失業率は、ユーロ圏が今年は9.1%、来年は8.5%、2019年は7.9%に改善するとした。EUはそれぞれ7.8%、7.3%、7%と、順調に低下する見込み。
インフレ率については、今年はユーロ圏が1.5%、EUは1.7%といずれも前回予測から0.1ポイント下方修正された。来年はユーロ圏が1.4%に減速し、EUは1.7%を維持するとみる。
ユーロ圏の財政赤字は引き続き縮小し、今年は対GDP比で1.1%、来年は0.9%にそれぞれ改善するとの見方を示した。
今年の成長率予測を国別に見ると、ドイツは2.2%と前回から0.6ポイント上方修正。フランスは1.6%、イタリアは1.5%へと大きく引き上げられた。カタルーニャ自治州の独立問題を巡り、政治的な混乱が生じているスペインも3.1%に上方修正された。債務危機に悩まされたギリシャは、昨年のマイナス0.2%から今年はプラス1.6%に回復するもようだ。ユーロ圏外の英国は、1.5%へと0.3ポイント引き下げられ、来年も1.3%に減速するとみる。
欧州委のピエール・モスコビシ次期経済・財務・税制・関税担当委員は、「5年間にわたる緩やかな回復を経て、欧州経済は今や加速している」とコメント。これを持続し、成果を等しく共有するためにも、加盟各国の確固たる努力が必要だと強調した。加えて、将来のショックへの弾力性を高めるには、ユーロ圏の構造的収れんと強化が求められると話している。
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