欧州連合(EU)の雇用・社会政策・保健・消費者問題理事会は23日、域内企業が他の加盟国に派遣する従業員の賃金を、派遣先の国の水準に合わせるよう義務付けることを決めた。併せて、派遣期間を1年以内に制限する案も支持している。賃金の安い国の企業が他の加盟国に従業員を送り込み、低価格でサービスを提供する「賃金ダンピング」を防止するため。
2004年に中東欧諸国がEUに加盟して以来、フランスやドイツなど西欧諸国では、建設現場などに中東欧諸国の企業が送り込む低賃金労働者の存在が問題視されている。これを受け、欧州委員会は2016年3月、1996年に施行された国外派遣労働者指令の改正を提案。また最近ではマクロン仏大統領が、こうした派遣労働者が西欧各国の反移民感情の高まりや失業問題の一因になっているとして、改革を推進していたが、一部の東欧諸国はこれに抵抗していた。
同理事会は今回、外国人労働者の給与やボーナス、福利厚生を派遣先の国の労働者と同水準とする原則で合意した。派遣期間の上限については、欧州委の提案した2年からさらに縮め、マクロン大統領の提唱した1年とすることを決めたが、企業が申請すればさらに半年の延長を認める。一方、同大統領は自国を通過するトラック運転手を派遣労働者とみなす方針だったが、今回の案では運輸企業への適用を免除。移行期間については欧州委の提案した3年と中東欧諸国の求めた5年の間をとり4年間とするなど、妥協も盛り込んだ。
しかし、ポーランド、ハンガリー、チェコは、自国の企業の西欧市場での競争力が低下するとして、最後までこれに反対した。この案は今後、欧州議会で審議される。域内企業が他の加盟国に派遣する労働者の数は、2014年の時点で190万人に上っている。[EU規制][労務]
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