欧州航空・防衛最大手エアバスは16日、カナダのエンジニアリング大手ボンバルディアの新型ナローボディー機「Cシリーズ」事業の過半数株を取得することで合意したと発表した。ボンバルディアは同事業の経営権を失うものの、エアバスの後ろ盾によるスケールメリットや販売網の拡大が期待される。また、米国は「Cシリーズ」に高関税を課す方針を示しているものの、エアバスの米工場で組み立てることにより問題を解決できる可能性も出てきた。
エアバスは、同機の製造・販売を手掛ける「Cシリーズ・エアクラフト・リミテッド・パートナーシップ」の株式50.01%を取得する。ボンバルディアは約31%、カナダのケベック州は19%の出資を維持する。エアバスは2023年に同事業を完全買収するオプションも得る。取引は2018年後半の完了を見込む。
「Cシリーズ」は110~130席の小型旅客機で、ボンバルディアは開発に60億ドルを投じた。同機を巡っては、カナダ政府からの不適切な補助により米デルタ航空向けの納入価格が「異常に安い」と米ボーイングが制裁を訴えた結果、米政府は先に、相殺関税219.63%と反ダンピング(不当廉売)関税79.82%、計約300%の関税をかける方針を明らかにした。同機の翼は英領北アイルランドのベルファスト工場で製造されており、約1,000人が雇用されているため、英米間の政治的議論にも発展している。
エアバスは、2015年に開設した米アラバマ州の自社工場で、米国の航空会社から受注した「Cシリーズ」を組み立てる意向で、これにより問題の関税を回避できるとみられている。
ボーイングは今回の取引について、両社とも政府の出資を受けていることから「疑問の余地が残る取引」だと指摘した。
エアバスとボンバルディアは2015年に「Cシリーズ」を巡る提携交渉が一度は破談となった経緯がある。ボンバルディアのアラン・ベルマール最高経営責任者(CEO)は、今回の取引がボーイングの申し立てを受けたものではなく、自社にとって正しい戦略と判断したからだと説明した。[M&A][労務]
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