製薬・化学大手バイエルは13日、農業化学のクロップサイエンス部門の一部事業を独化学大手BASFに売却することで合意したと発表した。取引額は59億ユーロ。米農業化学大手モンサントの買収計画を巡り、関係当局の承認を得るための資産放出の一環。
手放すのは、「リバティ」「バスタ(Basta)」「フィナーレ(Finale)」ブランドの除草剤事業、「リバティ・リンク」技術を利用したセイヨウアブラナ、綿、大豆などの種子事業に加え、これら作物の遺伝形質研究施設。米国とドイツ、ベルギー、ブラジル、カナダで雇用する従業員1,800人超も引き受ける。これら事業の昨年の売上高は合わせて約13億ユーロで、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は3億8,500万ユーロだった。
取引は関係当局の承認を必要とし、バイエルのモンサント取得実現が条件。バイエルは2018年3月末までにモンサントの買収手続きが完了するとみている。
バイエルは昨年9月、モンサントを660億ドルで買収することで合意。実現すれば、種子・農薬市場で世界シェアの4分の1以上を握る巨大企業が誕生する。欧州委員会は特に種子と農薬、遺伝形質の3分野で競争が弱まる恐れがあることを問題視し、今年8月にこの計画の本格調査を開始。先には調査を一時中断し、両社に承認獲得に向けた新たな案を出す猶予を与えていた。
農業化学分野では過剰在庫や農産物価格の低迷を背景に業界再編の動きが加速している。スイスの農業化学大手シンジェンタは6月、中国の化学大手、中国化工集団による買収手続きを完了。米化学大手デュポンと米同業FMCコーポレーションは、デュポンのクロップ・プロテクション事業の一部とFMCの健康・栄養事業の資産交換で合意している。[M&A][EU規制]
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