スコットランド自治政府は3日、シェール(頁岩)ガスのフラッキング(水圧破砕法)による採掘を禁止する方針を発表した。2015年に一時的な措置として導入したフラッキングの全面凍結を「無期限」に延長する形。環境保護団体からは歓迎の声が上がっているが、同事業に関わる企業との法廷闘争に発展する可能性もある。
スコットランド自治政府は今年2月、専用ウェブサイトでフラッキングに関する意見公募手続きを開始し、5月末まで意見を聴取。6万500件の回答が寄せられ、うち99%が反対意見だった。大手会計事務所KPMGの調査では、フラッキング事業がスコットランドの域内総生産(GDP)に占める割合は平均0.1%にすぎないという。
今回の決定で大きな影響を受けるのは、英国とスイスに本社を置く石油化学大手イネオス(Ineos)だ。同社は、エディンバラ西郊にグランジマス(Grangemouth)石化プラントを保有し、英国全土で計約1,800平方キロメートルに及ぶフラッキング探査権を得ている。2015年8月に英政府が新たなフラッキング免許の割り当てを行った際、全27鉱区中21鉱区の免許を獲得し、一躍、国内有数のシェールガス開発企業に躍り出た。
スコットランドでは、中部スターリング(Stirling)からリンリスゴー(Linlithgow)と、リンリスゴーからグラスゴーの東にかけた地域でのライセンス取得に5,000万ポンドを投資している。シェール事業を率いるトム・ピカリング氏は「われわれの目の前にある選択肢を検討している」とコメントし、法廷闘争も辞さない構えだ。「声が大きい少数団体が偏った影響を及ぼした」と批判した上で、エネルギー供給の安定的な確保や経済的な恩恵を考慮していないと指摘した。
スコットランド自治政府の決定とは対照的に、英政府はシェールガスをエネルギー確保の重要な戦略として位置付けている。2016年10月には、独立系エネルギー会社クアドリラ(Cuadrilla)・リソーシズによるイングランド北西部ランカシャー州での試掘計画を住民の反対を押し切る形で承認。同社は今年8月、英国内では6年ぶりとなるシェールガスの採掘を同州ブラックプール(Blackpool)近郊で開始した。
フラッキングは、シェールガスの唯一の掘削手法。化学物質や砂を混ぜた水を岩石層深くに注入し、岩石がひび割れるまで圧力を高めて天然ガスを抽出する。注入される水の量は1カ所当たり約2,700万リットルに上り、うち20~40%が逆流して地表にあふれ出る。この中には地中に存在していた天然の放射性物質も含まれ、これが放射性廃棄物に当たる可能性が高いとの指摘もある。[環境ニュース]
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