仏造船会社STXフランスを伊造船大手フィンカンティエリ(Fincantieri)が買収する計画を巡り、フランスとイタリアの政府間で27日、合意がまとまった。事実上、フィンカンティエリがSTXフランスの経営権を掌握する内容となっている。仏中部リヨンではこの日、マクロン仏大統領とジェンティローニ伊首相の会談が行われ、その後の両首脳の記者会見を受けて、ANSA通信などが伝えた。
STXフランスは、多額の負債を抱え管財人の管理下に置かれている韓国・STX造船海洋の子会社だったが、フィンカンティエリによる買収を阻止するため、仏政府が一時国有化していた。両政府はその後、複数回にわたり交渉を重ね、最終的にはフィンカンティエリがSTXフランスの株式51%を取得することで合意。ただ、うち1%株は仏政府が向こう12年にわたり貸し出す形を取り、この間にフィンカンティエリが雇用や企業統治、知的財産権などを巡る合意条件に反した場合には返還を求めるという。これを踏まえ、出資比率は原則的にはフィンカンティエリが50%、仏政府が34.34%、仏造船会社ナバルグループ(旧DCNS)が10%、STXの従業員側と地元サプライヤーがそれぞれ2%、3.66%となる。なお、STXフランスの8人の取締役のうち、フィンカンティエリは最高経営責任者(CEO)と会長を含む4人の任命権を獲得。会長は賛否同数の際の決定票を握る。
両政府は併せて、2018年6月までにフィンカンティエリとナバルグループの合併の可能性を模索する意向を表明している。ナバルグループには現在、仏防衛エレクトロニクス大手タレスが35%出資する。
フィンカンティエリは5月にSTXフランスの66.6%株を7,950万ユーロで取得することで合意。しかし仏政府は、STXフランスの西部サンナゼール(Saint-Nazaire)の造船所が航空母艦など大型船舶を建造できる国内唯一の造船所として戦略的に重要な上、買収による雇用への影響が懸念されると判断。伊政府およびフィンカンティエリとの交渉時間を稼ぐため、国有化に踏み切っていた。[労務][M&A]
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