世界貿易機関(WTO)の上級委員会は4日、米ワシントン州による米航空機大手ボーイングに対する税制優遇はWTOのルールに違反しないとの判断を下した。欧州同業エアバス・グループは2014年末に、欧州連合(EU)を通じて訴えていた。WTOの紛争解決機関(DSB)は昨年11月にEU側の主張を認める判断をしたが、米国側がこれを不服として上訴。EU側は今回の最終審で逆転敗訴となった。
エアバスは、ボーイングの「777X」の開発を巡るワシントン州による生産施設への税制優遇は約90億ドルに上ると指摘。輸入を締め出す補助金であり、WTOのルールに違反すると主張していた。DSBは昨年11月の段階では、税制優遇を「禁じられた補助金」としてEU側の主張を支持したが、ボーイングは税制優遇が10億ドルを下回ると反論していた。
上級委員会は今回、税制優遇は自由貿易を明白に妨げるものではないとして、「禁じられた補助金」との判断を覆した。これについてボーイングは、「エアバスとこれを支援する政府による虚偽の主張がWTOに退けられた」と歓迎している。さらに、昨年9月にWTOがEUによるエアバスへの補助金削減を求める米国の主張を認めたことにも言及。EUは違反を続け違法な補助金を撤廃していないとして、米国がEUからの輸出に制裁を課す可能性にも触れた。
一方、エアバスもボーイングに対する別の補助金の問題が未解決であるとして、エアバスはこれらにより最大で1,000億ドル相当の販売が失われたと主張。「ボーイングに対する違法な補助金を撤廃する必要があり、紛争はまだまだ続く」と強調している。[EU規制]
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