ポーランドの下院(定数460)は20日、最高裁判所の裁判官を強制的に退職させ、議会が新たに任命できる法案を235対192の賛成多数で可決した。欧州連合 (EU)はかねて、法の支配の原則に反する恐れがあると警告していたが、強行した格好。これを受け、首都ワルシャワでは与党・法と正義(PiS)が政権を握った2015年以降で最大規模の抗議デモが行われた。ロイター通信などが伝えた。
欧州委員会はこの前日、新法案の施行を一時停止し、フランス・ティメルマンス第1副委員長と協議するようポーランドに要請。加盟国の資格停止について定めたEU条約第7条の適用も視野に入れているとした。ポーランドの最大野党・市民プラットフォーム(PO)出身のドナルド・トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)は同国の「政治危機」を巡り、ドゥダ大統領に話し合いに応じるよう再三求めているが、拒否されている。ポーランド政府が方針を変えない場合、EUから罰金が科されるほか、欧州委での投票権が一時剥奪される可能性もある。
今回下院を通過した法案は、上院での可決とドゥダ大統領の署名が必要だが、PiSに属する同大統領は法案を支持する見通しだ。上院は先に、裁判官の降格や案件管理などを行う司法行政官の任命権を司法省に付与するなどの法案を可決している。
PiSは2015年10月の総選挙で政権を奪還した後、司法やメディアに対する権限を強化している。欧州委は昨年6月、憲法裁判所の判事任命への介入や、同裁の権限を縮小する法律の導入を巡り、これ是正するようポーランド政府に意見書を送付。政府は法改正を余儀なくされた。また昨年12月には、PiSが下院に出入りする報道関係者の制限を含むメディア規制法案を提出。これに野党側が反対して議場を占拠したことから、今年1月にこれを白紙撤回した経緯がある。[EU規制]
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