運輸省は、ディーゼル車からの大気汚染物質の排出量を抑える新たな措置を検討している。独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)による排ガス不正を受け、低下した消費者の信頼回復する狙いで、排ガス検査を実施する新機関が設立される可能性もある。ロイター通信が15日伝えた。
独運輸省は2016年、国内外の53モデルを対象に実走時の排ガス検査を実施。その結果、VWが使用していたような違法ソフトウエアは見つからなかったものの、外部の気温が一定以下に下がると排ガス浄化装置のスイッチを自動的に切り、窒素酸化物(NOx)を含む排気ガスをそのまま大気中に排出する仕組みを各社が採用していたことが発覚した。
政府は今回、こうしたソフトの修正を自動車会社に義務付けることなどを検討しており、このための費用が15億~20億ユーロに上ると試算している。ただ英金融大手HSBCのアナリストによると、これにはハードウエアの修理も必要となる可能性があり、そうなればコストは最大100億ユーロに達する見通し。
この問題を巡っては週刊誌シュピーゲルが先に、政府は自動車業界からの圧力を受け、気温10度以下で排ガス抑制装置のスイッチを切るソフトウエアの搭載を許容する方針と伝えていたが、同省は今回「この報道は誤っている」と反論している。ドイツの昨年の平均気温は9.4度だった。
運輸省と環境省は6月、新措置の導入について自動車業界や地方自治体と話し合う場として、「全国ディーゼル会議」を創設。8月2日に初会合が予定されている。ドイツではミュンヘン市やシュツットガルト市など一部都市がディーゼル車の締め出しを検討している。こうした中、自動車業界の側にも、政府が新措置を導入すればこれらの都市が締め出し策を再考するとの期待がある。
■運輸省、メルセデス車を追加検査
運輸省は、独自動車大手ダイムラーの高級車部門メルセデス・ベンツの一部車両を対象に、追加の排ガス検査を実施するもようだ。同省広報官の話を元にロイター通信が14日伝えた。
それによると、メルセデス・ベンツが排ガス検査を欺く違法ソフトを搭載していたとの証拠はないものの、一部車両が一定の条件下で高水準の汚染物質を排出していた。このため同省はダイムラーの関係者を召喚し、説明を求めたという。[環境ニュース]
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