ドイツのメルケル首相は7月28日、難民を積極的に受け入れる政策を変更しない方針を示した。同国では先に、難民による自爆テロ事件や鉄道乗客の襲撃事件が起きており、政府の難民受け入れ策への批判が一段と高まっていた。同首相は併せて、警察と軍隊の協力など、国内の警備強化に向けた措置を打ち出している。
同首相は、「ドイツは今も、1年前に打ち出した難民受け入れ策を実行する力がある」と強調。政治的迫害や戦争を逃れてきた人々を保護する一方で、テロとの戦いや国民の安全確保、難民の社会統合を進める必要があると訴えた。
メルケル首相は一方で、難民による一連の事件を強く非難。政府は事件の解明や再発防止に全力を尽くしていると説明した上で、一段の警備強化に向け9項目の計画を実施する方針を示した。この中には、警察と連邦軍の共同演習や、難民申請が却下された人々の送還をさらに迅速化する措置、難民の間で過激主義の芽を摘むための「早期警戒システム」、オンライン通信の暗号解読を手掛ける中央機関の設置などが含まれる。
ドイツでは先に、アフガニスタン出身の難民の少年がバイエルン州ビュルツブルク(Wuerzburg)行きのドイツ鉄道(DB)の乗客をおのとナイフで攻撃し、4人が重軽傷を負ったほか、同州アンスバッハ(Ansbach)の野外コンサート会場付近では、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に傾倒したシリア人男性が自爆して死亡し、15人が負傷した。
ザ・ローカルによると、国内で連邦軍が介入する可能性をめぐっては、連立政権に参加する社会党内から警戒の声が上がっている。先にバイエルン州ミュンヘン北西部のショッピングセンターでイラン系ドイツ人の男が銃を乱射し、9人が死亡した事件では、政府は犯人が複数だった場合に備え、軍警察に出動準備を命じていた。
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