仏国民議会(下院に相当、定数577)は19日、非常事態宣言をさらに6カ月延長する案について審議を開始した。非常事態宣言は昨年11月のパリ同時多発テロ後に発令されたもので、これで4度目の延長となる。政府は7月26日付で非常事態を解除する予定だったが、南東部ニースで14日に起きたトラック突入テロを受け急きょ、方針を転換した。AFP通信などが伝えた。
オランド大統領率いる与党・社会党は当初、3カ月の延長を提案していたが、最大野党の保守党の要望を受け入れ、6カ月の延長案を提出した。同案は下院での承認を経て、元老院(上院に相当、定数348)に送られる見通し。
ニースのテロでは84人が犠牲となった。犯人はニースに住む31歳のチュニジア系の男で、以前から軽犯罪などで当局に顔を知られていた。これまでのテロ事件後には団結心の高まりを見せていたフランス国民だが、ニースでの事件後は政府のテロ対策への不満が目立ち始めている。バルス首相が先に同事件の犠牲者の追悼会に出席した際には、参列者から罵倒を浴びせられる一幕もあった。ニース市長は、仏革命記念日だった事件当日、国家憲兵隊による同市の警備が手薄だったと非難している。
こうした中、保守党を率いるサルコジ前大統領は政府に対し、過激主義的な兆候のある人物全員に電子タグの装着や自宅軟禁を義務付けたり、外国人の場合は本国送還するよう要求した。これに対し政府は、「単なる疑いに基づいて人々を拘束するわけにはいかない」と反論している。
■南東部でナイフ男が母子を襲撃
仏南東部アルプス山脈のリゾート地シストロン(Sisteron)で19日、母親と娘3人がモロッコ系の男にナイフで襲われけがを負う事件が起きた。BBC電子版などが伝えた。
46歳の母親と8歳、12歳、14歳の娘は、貸別荘で朝食をとっていたところ、隣の貸別荘に家族と滞在していた37歳の男にナイフで切り付けられた。8歳の娘は重体。犯人は母子の服装に気分を害したとの報道もあるが、現地検察当局は「いずれもうわさにすぎず、容疑者はまだ何も話していない」としている。
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