2023/03/28(火)
第296回 海外赴任中の役員退職金の課税について
中窪さん:みらい先生、こんにちは。タイに赴任中なのですが、実は、このたび定年退職を迎え、役員を退任することになりました。
みらい:中窪さん、海外勤務お疲れさまです。タイに赴任されてからどれくらいになりますか?
中窪さん:ありがとうございます。タイに来て今年で10年になります。今回の退職に際して役員退職慰労金が支給されるのですが、日本の課税はどうなるのでしょうか。退職金の額は、先日の株主総会で2,000万円と決まりました。ちなみに、タイに赴任する前の5年間は日本で役員として勤務していましたので、役員として合計15年間の勤続期間に対する慰労金となります。この場合は日本で勤務していた期間に対応する部分だけが、日本で課税されるのですか?
みらい:従業員の場合にはおっしゃる通りですが、中窪さんは役員なので、租税条約上の「役員報酬条項」が適用されます。その場合は、役員として支給を受ける退職金については、国外勤務に対応する部分も報酬を支払う法人の所在地国(=日本)で一括して課税されることになります。今回の中窪さんの場合、退職金支給時には「非居住者」に対する支払いとして支払時に約408万円の源泉徴収が行われます。(=2,000万円×税率20.42%)
中窪さん:えっ。思っていたよりも税負担が重くて驚きました。日本勤務対応分のみが課税の対象となるわけではないのですね。今回、退職後は日本に帰国せずにそのまま海外で暮らす予定ですが、退任後日本に帰国するかどうかで違いがあるのでしょうか。
みらい:日本では非居住者に支払う退職所得は、支払額に対して20.42%(復興特別所得税を含む)の税率で源泉徴収が行われます。これは、役員退任後に日本に帰国をすることが予定されている方も同じ取り扱いになります。 というのは、退職所得の発生の時期は、原則として「退職所得の収入が確定した日」によります。役員の場合には、「株主総会または取締役会での退職金の支給が確定した日」となりますので、海外勤務中に金額が決定している場合は、非居住者所得となります。