英国の鉄鋼大手ブリティッシュ・スチールは22日、イングランド東部のスカンソープ(Scunthorpe)製鉄所で予定していた人員削減計画を取り下げると発表した。英政府の介入により、同製鉄所の高炉2基の稼働継続が保証されたため。これにより、最大2,700人の雇用の維持が正式に決まった。
ブリティッシュ・スチールを巡っては、親会社の中国・敬業集団が、経営難を理由にスカンソープ製鉄所の高炉を閉鎖する方針を打ち出し、3月末に人員整理に向けた手続きを開始した。しかし、高炉が閉鎖されると鉄鋼の国内生産能力が失われることから、政府が救済を決定。4月12日には、同社の運営を政府の管理下に置く緊急法案を可決した。
ブリティッシュ・スチールのリサ・クールソン暫定最高商務責任者(CCO)は「法案の成立後、事業の安定化に向け全力を注ぎ、原料炭の調達を完了した」と説明。これにより、英国最後の高炉2基の稼働を継続することが可能になったと述べた。
政府は今後、同社の売却先を探すが、レイノルズ・ビジネス貿易相は、同社を国有化する可能性が高いとみている。この場合、完全国有化ではなく民間企業との共同出資を目指す方針という。
トランプ米政権が発動した鉄鋼・アルミニウム関税によって、世界的に鉄鋼やアルミの調達コストが上昇している。英政府は、鉄鋼の国内生産は国家安全保障や国内製造業にとって重要だとしている。[労務]
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