英国の鉄鋼大手ブリティッシュ・スチールは27日、従業員および労働組合と人員整理に向けた協議を開始したと発表した。イングランド東部のスカンソープ(Scunthorpe)製鉄所の高炉2基を閉鎖する予定で、従業員約3,500人のうち2,000~2,700人に影響が及ぶ可能性がある。
同社は3つの選択肢を検討しており、早ければ6月初めにも同製鉄所での製鋼を停止し、圧延プラントを閉鎖する方針だ。このほかには、9月に高炉を閉鎖する案と、閉鎖を9月以降に先送りする案があるとしている。
ブリティッシュ・スチールは今回の措置について、スカンソープ製鉄所には2020年からこれまでに12億ポンドを投じてきたが、現在も1日当たり約70万ポンドの赤字を出していると説明。英政府と進めてきた補助金の交渉もまとまらないため、高炉の閉鎖はやむを得ないとしている。
同製鉄所では高炉2基を電炉に置き換える計画があり、ブリティッシュ・スチールは政府に支援を要請してきた。スカイニュースの報道によると、政府は5億ポンドの補助を提案したが、同社の親会社である中国・敬業集団はこれを拒否。敬業集団は10億ポンドの注入を求めていたとされる。
英政府は鉄鋼業界の脱炭素化支援などに25億ポンドの予算を計上しており、この多くをブリティッシュ・スチールに振り向けるとの観測も出ていた。
英国では昨年9月、インドの鉄鋼大手タタ・スチールがウェールズ南部ポートタルボット(Port Talbot)の製鉄所の最後の高炉を閉鎖した。タタは27年までに同拠点で電炉を稼働させる計画を進めている。[労務]
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