英政府が予算案で打ち出した国民保険料の事業主負担率や法定最低賃金の引き上げなどを実行すれば、小売業界は年間70億ポンドのコスト負担を強いられる――。国内の小売大手数十社が18日、リーブス財務相宛ての共同書簡でこう警告した。これらの措置は雇用の喪失や価格上昇につながると訴えている。
この書簡は、英小売協会(BRC)が取りまとめたもの。スーパー最大手テスコや医薬品・化粧品販売大手ブーツ、家電・携帯電話販売カリーズ(旧ディクソンズ・ カーフォン)、小売大手のジョン・ルイス・パートナーシップ、マークス・アンド・スペンサー(M&S)など、同協会に加盟する小売大手や業界団体の代表者ら約80人が署名している。
署名者らは書簡で、「新たに多額のコストが相次いで発生し、負担が積み重なるため、雇用の喪失は避けられず、価格も確実に上昇する」と予想。追加コストは年間70億6,000万ポンドに上ると見積もった。BRCは「こうした多額のコストをこれほどの短期間で吸収することは不可能だ」とした上で、「結果的にインフレ加速と賃金上昇率の鈍化、店舗の閉鎖、雇用削減を招く」と強調した。
政府は2025年4月から国民保険料の事業主負担率を1.2ポイント引き上げ15%とする予定だが、BRCはこれが小売業界に5億7,000万ポンドの追加コストをもたらすと予想する。同時に、事業主負担の発生する所得額も現行の9,100ポンドから5,000ポンドに引き下げられる予定で、こちらのコストは17億6,000万ポンドと見込んでいる。
25年4月には法定最低賃金に当たる「全国生活賃金」も6.7%引き上げられ、1時間当たり12.21ポンドとなる。小売業界は、これにより27億3,000万ポンドの負担が強いられるとした。加えて10月には、プラスチック包装のリサイクル費用が企業負担となる予定で、20億ポンドのコスト増が見込まれている。[環境ニュース][労務]
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