英国の鉄鋼大手ブリティッシュ・スチールが、イングランド東部スカンソープ(Scunthorpe)製鉄所の高炉閉鎖を前倒しする可能性が出てきた。今年のクリスマス前に実行する見込みで、従業員約4,500人のうち、約半数に間もなく解雇通知が出されるもようだ。関係者などの話を元に、BBC電子版が報じた。
ブリティッシュ・スチールは昨年11月、スカンソープ製鉄所で高炉を閉鎖し、電炉に置き換える計画を明らかにした。親会社の中国・敬業集団はこの計画を巡り、英政府と国家補助に関する協議を進めている。ただ交渉は難航しているとみられ、敬業集団は政府に圧力をかける目的で高炉閉鎖の前倒しを示唆しており、9月中旬にも最終決定を下す可能性がある。
敬業集団の広報担当者は、高炉の閉鎖時期については未定だとコメント。ブリティッシュ・スチールの広報担当者も「事業の脱炭素化については政府と協議中で、最終決定は下されていない」と強調している。
政府が進める国家規模での産業の低炭素化計画を受け、英国の鉄鋼業は転換期を迎えている。ブリティッシュ・スチールは12億5,000万ポンドを投じ、スカンソープとイングランド北東部ティーサイド(Teesside)の拠点に電炉を1基ずつ設置する計画で、2025年後半の稼働開始を目指している。政府はこの支援に3億~5億ポンドを投入する予定だが、業界の電化に伴い多くの雇用が削減されることから、従業員や労働組合からは反対の声も上がっている。
インドの鉄鋼大手タタ・スチールも英国の製鉄所の高炉とコークス炉を閉鎖する予定で、英政府は既に同社の電炉への転換計画に5億ポンドの補助金を提供することで合意。ジョーンズ・エネルギー安全保障・ネットゼロ相はこれらの支援に加え、「鉄鋼業の再建」向けに25億ポンドを投じると表明している。[労務][環境ニュース]
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