英国の金融業界の指導者らから成る資本市場産業タスクフォース(CMIT)は6日公表した報告書で、国内経済の立て直しには今後10年で1兆ポンドの投資を誘致する必要があるとの見方を示した。これを実現するためには、資本市場の抜本的改革が必要と指摘している。
同報告書によると、英国経済を立て直し、今後10年の国内総生産(GDP)成長率を年平均3%とするためには、年間1,000億ポンドの資本が必要となる。例えば、政府が目標とする年間30万軒の住宅建設には、200億~300億ポンドの投資が求められるほか、洋上風力・太陽光発電事業には200億ポンド、水道インフラには80億ポンド、テクノロジー・生命科学産業には150億ポンド、電気自動車(EV)普及には80億ポンドが必要としている。
同報告書は「英国の経済と資本市場は世界金融危機以降、米国の後塵を拝している」とし、こうした投資を引き付けるためには税制や規制面の大規模改革が必要と指摘。その一例として、国内の投資家や年金基金による国内資産への投資を奨励する税制上の優遇措置や、株式取引に課す印紙税の減税を提案した。
また、公開株式市場だけでなく、ベンチャー・キャピタル(VC)やプライベート・エクイティ(PE)、債券の各市場の改革にも目を向けるべきと強調。優良スタートアップ企業の新規株式公開(IPO)を促すには、これらの市場と公開株式市場の格差を縮小し、株式公開のうまみを感じさせる必要があるとしている。
CMITは2022年8月、政府の資本市場改革を支援するために立ち上げられ、政府に政策を提言するほか、業界内で変革を主導する。この報告書は、ロンドン東部の金融街カナリーウォーフの再開発を手がけるカナリーウォーフ・グループ(CWG)のナイジェル・ウィルソン会長が中心となってまとめた。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。