英国の郵便大手ロイヤル・メール傘下ポスト・オフィスの郵便局長らの冤罪(えんざい)事件を巡り、事件の原因となった会計システム「ホライゾン」を開発した富士通の英国法人のポール・パターソン最高経営責任者(CEO)は16日、下院の企業・貿易委員会で証言した。富士通が事件で果たした役割を謝罪し、同社には被害者への補償を負担する責任があるとの考えを示した。
パターソン氏は、ポスト・オフィスが無罪の郵便局長らを窃盗や詐欺で起訴した際に証拠を提供したことを認め、「本当に申し訳ない」と謝罪。「富士通には被害者への補償に貢献する道徳的責任がある」と述べた。
2019年にCEOに就任した同氏は、10年以前に社員が同システムの問題に気づいていたかについて、「個人的な勘では気づいていたと思う」と回答。経営幹部が気づいた時期については、具体的には分からないと述べた。ただ「バグやエラーの存在は最初から知られていた」とし、ポスト・オフィスとも情報を共有していたと証言した。
また、富士通は当初、ポスト・オフィスに対してシステムの記録を書き換えられるのは郵便局長のみと説明していたが、同社による遠隔操作も可能であることを改めて認めた。パターソン氏は、ポスト・オフィスがいつから遠隔操作が可能なことを知っていたかについては不明と述べている。
一方、スキャンダルの渦中にある富士通が政府から新規契約を受注することに反対の声が上がっていることに対しては、富士通は今後も公共調達の入札に参加する方針を示した。ただ、同氏は「当社のブランドや価値観が疑問視されていることは明らか」と認めている。
この事件では、ホライゾンの不具合により全国各地の郵便局でシステム上の金銭不足が生じ、2000~14年に郵便局長700人以上が有罪判決を受けた。契約打ち切りによる失職や不足額の弁済なども含め、影響を被った郵便局長は4,000人以上に上る。今年に入り、この事件を扱ったテレビドラマが話題となり、被害者の救済を求める声が高まった。
ポスト・オフィスは被害者を対象とした補償制度を設置しており、政府は補償費用として10億ポンドの予算を確保している。ホリンレーク郵政担当相は、公的な調査で富士通の責任が認められれば、同社にも補償の一部負担を求める方針を示している。[日本企業の動向]
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