英国の国民医療制度(NHS)に勤務する看護師や救急隊員などを代表する主要労組は16日、政府と賃金協定で合意した。今後組合員の投票を行うが、労組は受け入れを勧告しており、昨年末から断続的に行われているストライキに終止符が打たれる見通しとなった。BBC電子版などが伝えた。
合意した賃上げ案では、今年度分は3月までに給与水準に応じて1,655~3,789ポンドの一時金を支払うほか、来年度は賃金を5%引き上げる。これは看護師、救急隊員、理学療法士、助産師、警備員、清掃員など、医師を除く全てのNHS職員が対象となる。
労組は2月末、賃上げや労働条件について政府との集中的な協議に入った。協議に参加した14労組のうち、英王立看護師協会(RCN)や公務員労組ユニゾン、一般労組GMBなど主要労組は組合員に賃金協定を受け入れるよう呼びかけている。一方、ユナイトは不十分であるとして協定を支持していないが、組合員の投票は実施する。
スナク首相は今回の合意について、「妥当な賃上げであり、インフレの影響を半減させる約束を実現できる」と述べている。政府は当初は3.5%の賃上げを提示し、これを超える賃上げはさらなるインフレを誘発すると主張していた。
合意した賃上げ案が受け入れられれば人件費として新たに25億ポンドが必要となるが、政府は財源をどうするかを明らかにしていない。当初は医療予算から捻出する必要があり、NHSのサービスに影響が出るとの指摘もあるが、バークレー保健・社会福祉相は「患者に影響が及ぶことはない」としてこれを否定した。
なお、若手医師であるジュニアドクターを代表する英国医師会(BMA)は、過去15年間で低下した実質賃金を補うためとして35%の賃上げを要求。政府はBMAにストライキを中止して協議に入るよう呼びかけているが、BMAは他の労組と同じ条件に基づく協議は拒否している。[労務]
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