リチウムイオン電池(LIB)セルを手がける英国の新興企業ブリティッシュボルト(Britishvolt)が破綻し、管財人の管理下に入った。身売り交渉がまとまらなかったためで、従業員300人の大半は即時解雇された。これで英国内に電気自動車(EV)向けバッテリーのギガファクトリーを建設する計画が頓挫することになり、政府の目指すバッテリーの国内生産拡大が危ぶまれている。BBC電子版が17日伝えた。
同社は株式の過半数を売却する方向で、インドネシアの銀行家が運営する英国の投資会社ディーラブ(DeaLab)・グループと協議していたが、まとまらなかった。フィナンシャル・タイムズによると、その後に既存株主グループからも買収提案を受けたものの、債権団が同意せず破綻を余儀なくされた。
ブリティッシュボルトは、イングランド北東部ブライス(Blyth)に年産能力30ギガワット時のバッテリー工場を建設する計画を進めていた。総工費は38億ポンドを予定し、政府も1億ポンドの拠出を約束していたが、生産開始予定がたびたび延期されたため実現が疑問視され、資金調達が難航していた。
昨年10月には資金繰りが悪化したため政府に3,000万ポンドの支援を求めたが拒否され、破綻の危機に直面。その後、既存株主のスイスの商品取引・資源大手グレンコアから当面の運転資金を確保しこれを免れたが、今年に入り、身売りに向け協議中と明らかにしていた。
英国で計画されているバッテリーの大規模工場はこれで、中国のエンビジョンAESCが日産自動車と共同でイングランド北東部サンダーランド工場に建設を予定するギガファクトリーのみとなる。これに対し、欧州連合(EU)域内では2035年までに35カ所のギガファクトリー開設が見込まれている。
英国の自動車産業はかねて、国内のバッテリー製造能力の不足を指摘し、ギガファクトリーが新設されなければ自動車各社が生産を国外に移転する恐れもあると訴えている。
ブリティッシュボルトが工場建設を予定していたブライスは、深海港を備え交通の便や電力供給量にも恵まれるなど好条件のため、資金の後ろ盾がある新たなギガファクトリー・プロジェクトへの転売に期待がかかっている。[環境ニュース]
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