ドイツのミュンヘンで8日、不正会計疑惑を受け経営破綻した決済サービス大手ワイヤーカード・グループのマーカス・ブラウン元最高経営責任者(CEO)と元幹部2人の公判が始まった。ドイツの政財界を揺るがした同国史上最大の金融詐欺を巡り裁かれることになる。BBC電子版が伝えた。
公判に臨むのは、ブラウン被告のほか、ドバイ子会社の元トップ、オリバー・ベレンハウス被告と、ワイヤーカードの会計責任者だったシュテファン・フォン・エルファ被告。いずれも、詐欺や市場操作などの罪に問われている。
ブラウン被告は公判前拘留でミュンヘンのシュタデルハイム刑務所に収監されており、公判は同刑務所の地下にあるマフィアやテロリストの裁判向けの重警備法廷で開かれる。同被告は容疑を否認している。
同社の詐欺事件を巡っては、ヤン・マルサレク元最高執行責任者(COO)にも逮捕状が出ているが、同容疑者は2020年6月に不正会計疑惑が発覚した後に所在不明となり、欧州刑事警察機構(ユーロポール)が指名手配中。ベラルーシ経由でロシアに渡ったとみられているが、ロシア政府はこれを否定している。
1999年創業のワイヤーカードは、欧州フィンテック(ITを活用した金融サービス)業界の寵児へと急成長。ドイツ主要30銘柄にも組み込まれ、業績がピークを迎えた18年には時価総額で国内金融最大手ドイツ銀行を上回った。しかし、19年に不正会計疑惑が発覚し、20年6月には現金19億ユーロの所在が確認できないとして破産手続きを申請した。
同社を巡っては、19年にソフトバンクグループ(SBG)から約9億ユーロの出資を受けた際に、顧客データを捏造(ねつぞう)していたことも、ミュンヘンの検察当局によって立証されていると報じられている。[日本企業の動向]
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