欧州中央銀行(ECB)は21日に政策理事会を開き、ユーロ圏の市場介入金利(最重要の政策金利)をゼロ%から0.5%に引き上げることを決めた。中銀預入金利も0.5ポイント引き上げ、ゼロ%としている。ECBが利上げを行うのは11年ぶり。ECBはかねて利上げを予告していたが、インフレが加速し続ける中、大幅利上げにより一気にマイナス金利を脱した格好となる。
ECBは、次回以降の政策理事会で「金利のさらなる正常化を進めることが適切」とし、今後の追加利上げの可能性を示した。ECBは前回6月の政策理事会で、7月に0.25ポイントの利上げを行うと予告していた。しかし、インフレが一段と加速していることや、今回の理事会で新たな資産購入策が承認されたことを理由に、利上げを前倒しで進めたと説明。これにより、今後は理事会ごとに金利を決定できるようになるとしている。
この日の理事会で承認された新たな資産購入プログラムの名称は「伝達保護措置(TPI)」で、多額の債務を抱える南欧諸国の資金調達コスト上昇を抑えることが狙い。背景には、6月の理事会での利上げ予告後に、イタリア国債利回りが急上昇し、ドイツの利回りとの開きが拡大するなど域内格差が生じていることがある。
ECBのラガルド総裁は「TPIは今後の金融政策の効果を適切に伝達するために必要不可欠」と説明。今回の理事会でこれが全会一致で承認されたことと、10年以上ぶりの利上げが決定しマイナス金利を脱したことは「歴史的」とコメントしている。
ユーロ圏の6月のインフレ率(速報値)は8.6%と、5月の8.1%からさらに加速し、統計開始以降の最高を更新している。
ECBは、2016年3月に市場介入金利をゼロ%に、中銀預入金利を19年9月にマイナス0.5%にそれぞれ引き下げて以来、据え置きを続けてきた。ECBが最後に利上げを行ったのは11年7月。
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