欧州中央銀行(ECB)は15日、臨時理事会を開き、金融引き締め策に伴う南欧諸国の国債利回りの上昇に対処する方針を明らかにした。「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」で償還期限を迎える資産の再投資で柔軟性を持たせることを決めた。南欧諸国の国債を買い入れることで債務危機の再来に対する懸念を和らげる狙いがある。
ECBは9日の政策理事会で、7月にユーロ圏の市場介入金利(最重要の政策金利)を0.25ポイント引き上げると予告し、9月にも再び利上げを行う方針を表明。7月1日からは従来の資産購入プログラムを終了することも決めた。これを受けて南欧諸国の国債利回りが上昇し、イタリア国債の10年物利回りは4%を上回る水準に達した。15日には米連邦準備理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、0.75ポイントの利上げに踏み切ると見込まれ、国債市場にさらに影響が出ることが懸念されていた。
ECBは今回、「金融政策の伝達メカニズム機能を維持するため、PEPPのポートフォリオで償還期限が到来する資産の再投資には柔軟性を適用することを決めた」と述べ、資金を国債市場の混乱を緩和するために投入することを約束した。また、ユーロ圏における「断片化を防ぐ手段の設計を速やかに終わらせる」として、資金調達コストが各国で大きく異なることを是正する仕組みを早急に設ける方針も示した。
PEPPは2020年3月に、新型コロナウイルス危機による欧州の経済や金融市場への打撃を緩和するために導入されたもので、資産購入枠は1兆8,500億ユーロだった。今年3月末で終了し、償還期限が到来した元本は少なくとも24年末まで再投資を続けることを決めていた。
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