英国政府は17日、「オンライン安全法案」を議会に提出した。有害なコンテンツからユーザーを保護すると共に、オンラインプラットフォーム運営企業の責任を強化する狙い。2020年に公表した草案に修正を加え、有害コンテンツの定義を明確化する一方、プラットフォーム運営企業の幹部に対する罰則を厳格化している。
政府は19年から同法案の策定に着手。20年12月に草案を公表したが、その後も見直しを続けてきた。今回、議会で同法案を検討する委員会からの提言を受けて最終的な法案をまとめた。
同法案は、「カテゴリー1」と分類された最大規模のオンラインプラットフォーム運営企業に対し、有害コンテンツの摘発と削除を義務付ける内容。これに向け、メディア・通信業界の監督機関Ofcomの監督権限を強化し、違反した企業に全世界売上高の最大10%の罰金を科すことを可能とする。
同法案では違反企業の幹部に刑事罰が科されるが、最終案ではこれを厳格化し、証拠を隠滅または偽造した場合や、Ofcomによる立ち入り検査を拒否した場合、情報提供や聞き取りへの対応を怠った場合も刑事罰の対象とした。
また当初の案では、「違法ではないが有害」なコンテンツについて、運営企業側に判断をゆだねていたが、最終案では委任立法によりこうしたコンテンツを定義するとしている。政府はこれにより、運営企業が過剰な取り締まりを行い、言論の自由が侵されることを回避できると説明している。
さらに、Ofcomが定める行動規範の中で、削除対象となるコンテンツの優先順位を示し、自殺の推奨やヘイトクライム、暴力の扇動といった内容の優先度を高める。これにより、運営企業はユーザーをこうしたコンテンツから優先的に守るアルゴリズムの開発を求められる。運営企業は、新しいタイプの有害コンテンツが浮上すれば、これをOfcomに報告する義務も負う。
このほか、最終案では報道の自由を保護するためニュース記事を適用対象外とした。ポルノサイトには、ユーザーの年齢確認の厳格化を義務付ける。ソーシャルメディアの運営企業には、ユーザーが希望しないコンテンツや他のユーザーからのアクセスを拒否できるよう対応を義務付ける。わいせつな画像を一方的に送りつける「サイバーフラッシング(露出)」は新たに違法となる。
また当初の案では、プラットフォーム運営企業は児童虐待が疑われるコンテンツについて自主的に通報するよう求められていたが、最終案では国家犯罪対策庁への通報が法的に義務づけられている。
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