チェコで8~9日、下院(定数200)選挙の投票が行われ、開票の結果、中道右派の野党連合SPOLUが得票率27.8%で首位になった。バビシュ首相率いる中道右派の与党「ANO2011」は27.1%と僅差で敗れた。単独での議席数ではANOが首位となったものの、野党連合は既に連立交渉入りを決めており、政権交代が実現するかが焦点となっている。
SPOLUの獲得議席数は71議席で、改選前から29議席増やした。SPOLUは、中道右派の市民民主党(ODS)と「TOP09」、キリスト教民主同盟・人民党で構成される。ANOは得票数の関係で単独トップの72議席を獲得したが、6議席減らした。
反汚職と親欧州連合(EU)を掲げる海賊党と「無所属および首長連合(STAN)」から成る連合の得票率は15.6%で、37議席を獲得。野党連合による連立政権の樹立を目指すSPOLUは、「海賊党とSTAN」と連立交渉に入ると表明している。両連合の議席数は合わせて108議席で、交渉が成立すれば過半数議席を押さえ、政権交代が実現する。
日本出身のトミオ・オカムラ氏が党首を務める極右政党「自由と直接民主主義(SPD)」は得票率9.6%で20議席を得た。ANOと連立を組み政権入りしていたチェコ社会民主党は4.7%と議席獲得に必要な5%を下回り、ボヘミア・モラビア共産党も3.6%で、第2次世界大戦以降初めて下院での議席獲得を逃した。
ANOの敗北は、バビシュ首相に浮上した金銭絡みの疑惑が影響したとみられている。投票の数日前に流出した、世界の政治家・富裕層による租税回避や資産隠蔽(いんぺい)の事実を暴露する「パンドラ文書」により、バビシュ首相はフランス南東部カンヌ近郊の城をオフショア企業を通じて2,200万ドルで購入したが、政治家に義務付けられている資産公開時にこれを隠匿していたことが明るみに出た。これを受け、SPOLUは選挙期間の追い込みで政治的な腐敗の撲滅を訴えた。
■ゼマン大統領が入院
ゼマン大統領(77)は10日、持病の糖尿病の合併症のため、首都プラハ近郊の病院に入院した。前日の9日には、公邸に投票箱を持ち込み投票を済ませた。現在は集中治療室(ICU)で治療を受けている。
同大統領は先に、単独での獲得議席数が最多となった政党から首相候補を指名すると発表。今回の選挙ではANOが72議席で最多を獲得したため、バビシュ首相が再指名される可能性がある。
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