世界の政治家・富裕層による租税回避や資産隠蔽(いんぺい)の事実を暴露する大量の文書が流出した。「パンドラ文書」と呼ばれるこれらのファイルのデータ量は、過去に流出した「パナマ文書」を上回る史上最大の規模。英国やチェコなど世界各国の現職・歴代首脳35人の取引も暴かれている。同文書を入手した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が3日、明らかにした。
パンドラ文書は世界のオフショア・サービス企業14社から流出したもので、約1,200万件の文書から成る。データ量は2.94テラバイトと、2016年に流出したパナマ文書(2.6テラバイト)や17年の「パラダイス文書」(1.4テラバイト)を上回る。
パンドラ文書では、現職および歴代の各国首脳35人と、91カ国・地域の政治家や官僚330人の密かな取引が暴かれているほか、ロシア、米国、トルコなど世界各国の超富裕層130人以上の金融取引の実態が明らかにされている。
それによると、英国の与党・保守党の主要後援者でジョンソン首相の選挙資金も寄付した企業弁護士モハメド・アメルシ氏は、スウェーデン・フィンランド資本の通信大手テリア・カンパニーによるウズベキスタンでの汚職に関わっていたとみられる。同社はこの問題で17年に、米国やスウェーデンなどから9億6,500万ドルの罰金を科されている。
一方、英国のブレア元首相夫妻は17年、ロンドンの645億ポンド相当の不動産をオフショア企業を通じて購入することにより、31万2,000ポンドの印紙税を逃れていた。この取引に違法性はないものの、ブレア氏は首相時代にオフショア取引を強く批判していた。
チェコのバビシュ首相は、フランス南東部カンヌ近郊の城をオフショア企業を通じて2,200万ドルで購入したが、政治家に義務付けられている資産公開時にこれを隠匿していた。
このほか、ヨルダンのアブドラ国王が密かに所有する企業を通じて英国や米国で総額1億600万ドル超の不動産を購入していたことや、アゼルバイジャンの資産家一族が英国で総額4億ポンドを超える不動産取引に陰で関与していたこと、ケニヤのケニヤッタ大統領が数十年間にわたり、一連のオフショア企業を密かに所有していたことなどが明らかになっている。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。