欧州委員会は14日、欧州グリーンディールに基づく一連の法案を公表した。その中で、欧州連合(EU)域内で販売される乗用車および小型商用車の新車の二酸化炭素(CO2)排出量の平均値を現在の水準から2030年までに55%削減する目標を提案。37.5%減を目指す現行目標から大幅に厳格化する格好となる。35年までには100%削減する方針で、事実上ゼロエミッション車(ZEV)以外の新車は販売できなくなるとしている。
欧州委はこれに向け、加盟各国による電気自動車(EV)充電施設や水素燃料補給施設の設置目標も示した。25年までに主要高速道路で60キロメートルごとにEV充電施設を、150キロメートルごとに水素燃料補給施設を設置することを義務付ける。
ベルギーの環境団体トランスポート&エンバイロメント(T&E)は一連の新目標について、「自動車産業にとって転換点となり、ドライバーには朗報」とコメント。「これによりEVが大衆化し、充電施設の展開も大幅に加速する」との見方を示している。
欧州委は19年12月、50年までの炭素中立を目指す「欧州グリーンディール」を採択。間もなく発効する欧州気候法では、これに向けEUの温室効果ガスの純排出量を30年までに1990年比で55%削減する目標を定めている。欧州委がこの日に公表した一連の法案は、この目標の達成に向けた具体的措置で、自動車関連の新目標もその一つとなる。
■欧州グリーンディール達成へ各種法案
欧州委はこの日、ジェット機燃料に混合されるサステナブル燃料の比率を段階的に引き上げる案や、船舶燃料からの温室効果ガス排出量に上限を定める案も打ち出した。
このほか、EU排出権取引制度(EU―ETS)の改革案では、「キャップ」と呼ばれる排出可能量の上限の引き下げを提案。また、「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」の導入に向けた法案も公表された。
また、再生可能エネルギー指令案では、30年までに再生可能エネルギー由来の電力の比率を40%に高める目標を打ち出したほか、エネルギー効率指令では、EUレベルでのエネルギー消費量の削減目標を厳格化するとしている。
欧州委はほかに、加盟各国の建物や陸運・海運、農業、廃棄物、小規模産業からの排出量削減目標をそれぞれの経済力に応じて厳格化することや、土地利用や林業、農業の規制を見直し、30年までに3億1,000万トンのCO2を森林や土壌を通じて除去することも提案している。[環境ニュース][EU規制]
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