欧州中央銀行(ECB)は8日、金融政策の戦略見直しの結果を公表した。中期インフレ目標を従来の2%弱から2%に改定するほか、短期的には目標を上回ることも容認する姿勢を示している。ECBが戦略見直しを行うのは、2003年以降で初めてとなり、長年のインフレ抑制的な戦略と決別する姿勢を打ち出した。
ECBは6~7日に開いた臨時の政策理事会で、戦略の見直し内容を固めた。中期インフレ目標はこれまで「2%より低く、これに近い水準」とされていたが、一部委員からは曖昧で物価上昇の上限を示唆する恐れがあるとの声が上がっていた。ECBは今回、新目標の2%は「対称的」なもので、「目標からの逸脱は上下ともに好ましくない」と説明している。
戦略見直しでは併せて、インフレ率が中期目標の2%から短期的に逸脱することを認める柔軟性も示された。特に、近年のように低金利とインフレ期待の低迷が続いている時期には「インフレ目標からの下方への逸脱が固定化することを避けるため、とりわけ強制的あるいは持続的な金融政策措置も必要」とし、一時的に2%超のインフレ率を目指すこともあり得るとしている。
フィナンシャル・タイムズによると、ECBは前回03年の見直し以降、ドイツの中銀であるドイツ連邦銀行が唱える保守的な金融政策を取ってきたが、今回の見直しでこれと決別する形となる。
なお、今回の戦略見直しでは、気候変動への配慮を金融政策に一段と組み込む方針も打ち出された。情報開示やリスク管理、担保の枠組み、企業資産購入などの分野で、気候変動を考慮するとしている。
ECBは今後、定期的に戦略を見直す方針で、次回の見直しは25年に着手するとしている。
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