新型コロナウイルスワクチンの知的財産権の放棄を米国が支持したことを受け、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は6日、欧州連合(EU)としてもこの案を検討する姿勢を示した。世界的な生産を拡大し低所得国のワクチン不足を解消する狙いだが、製薬業界や一部EU加盟国は、問題解決につながらないとして反対している。
ワクチンの知的財産権をめぐっては、南アフリカとインドがかねて世界貿易機関(WTO)に一時的な停止を求めており、世界で100カ国以上がこれを支持している。米国はこれまでこの案に抵抗していたものの、バイデン米大統領は5日に一転、これを支持する方針を表明。世界保健機関(WHO)もこの動きを歓迎していた。
フォンデアライエン委員長は6日の演説で、世界のワクチン不足解消に向けては「生産の拡大が先決」とした上で、「ほかにも効果的かつ現実的な解決策があれば協議に応じる」とコメント。「米国の提案が目的達成に役立つかどうかを検討する準備がある」と話した。ただ、短期的にはワクチン生産国が直ちに輸出に応じるとともに、供給網の混乱を避けることが重要としている。
ユーロニュースによると、マクロン仏大統領は「知的財産権の放棄を全面的に支持する」とした上で、アフリカ諸国などのメーカーはワクチンの生産体制が整っていないため、富裕国による寄付を優先させるべきとしている。一方、ドイツのメルケル首相は「知的財産権の保護は技術革新の源」としてこの案に反対している。
米医薬品業界団体は「ワクチンの接種地点への配送や原材料の不足といった現実的な問題は解決されない」としてこの案に強く反対している。
ワクチンの知的所有権には、特許や著作権、意匠権、企業秘密などが含まれ、WTOのルールで世界的に保護されている。南アやインドなどは、このルールの適用を一時停止することを求めている。ロイター通信によると、バイデン大統領がこれを支持したことを受け、米製薬大手ファイザーと共に新型コロナウイルスワクチンを開発したドイツのバイオ医薬品会社ビオンテックの株価は一時、15%急落した。
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