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【記者ルポ】英国でワクチン接種を体験 アストラゼネカ製、発熱などの副反応

英国では昨年12月8日から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、先進国としては世界で群を抜くスピードで展開が進められている。まず医療従事者や80歳以上の高齢者を優先対象として始められ、段階的に対象年齢を引き下げ、本稿執筆時点(3月26日)では50歳以上が接種を受けることができるようになった。これは英国在住の日本人も対象で、筆者にも3月上旬、国民医療制度(NHS)からテキストメッセージで案内が届いた。接種当日のうちに副反応と思われる発熱・倦怠感といった症状も経験したが、抗体を得るための「生みの苦しみ」と割り切れば、ワクチン接種で得られた安心感の方が大きい。(菅原逸子)

■「負け続き」ジョンソン政権の逆転劇

英国のこれまでの新型コロナウイルス感染対策は、マスク着用や出入国者に対する水際対策などが後手に回り、昨年末には変異株の猛威が追い打ちとなるなど「負け続き」とも言える状態だった。定例記者会見でがっくりと肩を落としたジョンソン首相の姿は記憶に新しい。

ところが一転、英国ではいまワクチン接種プログラムが着々と進行し、政府はロックダウン(都市封鎖)と慎重な規制緩和策の両かじを取りながら、感染者数・死者数ともに減少傾向をたどっている。これは、早い段階からワクチン接種を新型コロナの封じ込め戦略の本丸に据え、調達面でも先手を打って来たジョンソン政権にとって、初の勝利と言えるかもしれない。

高齢者に対しては、すでに2回目のワクチン接種も始まっている。

■接種はものの10分足らずで終了

ワクチン接種の案内は、NHSから郵送書類または携帯電話宛てのテキストメッセージで送られてくる。直接、NHSのウェブサイトからも予約が可能だ<https://www.nhs.uk/conditions/coronavirus-covid-19/coronavirus-vaccination/book-coronavirus-vaccination/>。予約にはNHS番号が必要。最寄りの一般開業医(GP)で登録できる。次のリンクはイングランド住民用<https://www.nhs.uk/nhs-services/gps/how-to-register-with-a-gp-surgery/

予約サイトでは、自身の居住エリア内にある複数の接種場所が候補として提示され、日時も15分区切りで数多くの選択肢が用意されている。さっそく2回分を予約し、3月半ばに1回目のワクチン接種を受けるため、ロンドン中心部ロンドンブリッジのガイズ病院敷地内に設置された接種センターまで足を運んだ。

ワクチン接種前に待機するプレハブテントの待合室(筆者撮影)

ワクチン接種前に待機するプレハブテントの待合室(筆者撮影)

プレハブテントに入り、まずは受付で姓名を告げた後、「本日のワクチンはアストラゼネカ」と伝えられる。待合室でモニターに自分の順番が表示されるまで待つこと5分。隣接する接種会場は、簡易的な衝立とカーテンで仕切られた個室が並ぶ。部屋は6畳程度で、診察室のようだ。担当者から当日の体調、直近でインフルエンザの予防接種を受けたか、アレルギーはあるか、国籍などの質問に答えると、すぐに注射という段取りだ。

当日の担当者は医学生だった。「昨年12月からずっと練習しているので、安心して」とリラックスさせてくれたが、注射の前には嫌でも緊張が付きまとう。針は極細で、案外短い。チクリと感じたと思ったら、「はい、終わりました」。すべてが終わるまで10分もかからない。

ボランティアたちによる誘導や椅子やドアの消毒などもスムーズに行われていて、英国のワクチン接種プログラムがスピード感をもって進んでいるのを実感した。

■気になる副反応は?

承認されたばかりの新型コロナのワクチンについては、副反応が気になる方が多いと思う。自身の体験をお伝えしたい。

知人の中で、頭痛、熱、倦怠感などを経験した人がいることは知っていた。だが少数派であったため、それほど心配はしていなかったのだが、結果的には38度の熱がでて、悪寒が走り、体の節々が痛く、悪い風邪にかかったかのような症状が現れた。翌日は仕事を休み、一日中寝込んだ。

反応が出始めたのは接種の7時間後ぐらいで、「晩酌のビールが少しまずい」「なんとなく熱っぽい、だるい」となり、「今夜もし飲み会があったら、多分断るだろう」という程度に体調が変化していった。

その2時間後には体温が急に上昇し始め、「飲みに行かなくて正解だった」状態となる。医学生から勧められた解熱鎮痛薬のパラセタモールを服用すると、熱が少し下がった。アストラゼネカの説明書によると、これらの副反応は一般的なものらしいが、予想外に体調が悪くなったので少し不安になった。平熱に下がった後も、頭痛や食欲不振、軽い喉の痛みが残り、体調が正常と感じられるまで少なくとも72時間はかかった。

2回目の接種は6月初旬だ。特筆すべき副反応がでれば、また報告したい。

接種日やワクチンの製造元が記されたカード(同)

接種日やワクチンの製造元が記されたカード(同)

なお、アストラゼネカの説明書による副反応は次の通り。

(1) 非常に一般的なもの(10人に1人以上に現れる可能性あり)▽注射をした周囲の痛み、腫れ、ほてり、かゆみなど▽全体的に体調が悪くなる▽疲れ、だるさ▽悪寒、熱っぽさ▽頭痛▽吐き気▽関節や筋肉の痛み

(2) 一般的なもの(10人中、最高1人までに現れる可能性あり)▽注射をした箇所のしこり▽発熱▽吐き気▽インフルエンザのような症状(高熱、のどの痛み、鼻水、咳、悪寒)

(3) 珍しいもの(100人中、最高1人までに現れる可能性あり)▽めまい▽食欲減退▽腹痛▽リンパ節の腫れ▽多汗、肌のかゆみ、発疹


関連国・地域: 英国
関連業種: 医療・医薬品

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