欧州委員会は24日、欧州連合(EU)域内で製造された新型コロナウイルスワクチンの域外向け輸出の事前承認制度をさらに厳格化する案を公表した。輸出相手国のワクチン普及率とワクチン輸出状況を審査項目に加える。域内向けのワクチン供給を確保するためで、英国や米国向けの輸出が制限される可能性がある。
この案によると、欧州委やEU加盟各国は今後、ワクチン輸出の承認審査に当たり、相手国がワクチンやワクチン原材料の輸出を法律やその他の手段で制限しているかどうか、相手国の感染状況やワクチン接種率、ワクチンの調達状況がEUより良好かどうかの2点も考慮する。この案は3月25~26日のEU首脳会議(サミット)で承認される見通し。
欧州委は、英国の製薬大手アストラゼネカや米国のファイザーとドイツのバイオ医薬品会社ビオンテックからの供給遅延を背景に、1月末にワクチン輸出の事前承認制度を導入。3月にはこの制度に基づき、アストラゼネカがイタリアで製造したワクチンのオーストラリアへの輸出が差し止められていた。
欧州委は今回、この制度の導入以降に申請が却下されたのはこの1件のみで、残りの380件の輸出申請は承認されたとしている。この結果、EUからは33カ国・地域に約4,300万回分のワクチンが輸出され、中でも英国には最多の約1,090万回分が輸出されたという。
フォンデアライエン欧州委員長は、「加盟各国が感染第3波に襲われ、契約した供給量を守らないワクチンメーカーもある中、EUはワクチンを製造する先進国の中で唯一、多数の国に大量のワクチンを輸出している」とした上で、こうした姿勢は一方的なものであってはならないと指摘。「われわれはEU市民向けに早急に十分な量のワクチンを確保する必要がある」としている。
ミシェルEU大統領は先に、英国と米国はEU以上に厳格に「ワクチンやワクチンの原材料の輸出を禁止している」とコメント。これに対し英政府は、国内で製造されたワクチンや原料の海外への供給を阻止したことはないと抗議していた。ただ、同国からの出荷内容や供給先に関する情報は明らかにされていない。
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