英金融サービス企業グリーンシル・キャピタルは8日、破産を申請した。同社にはソフトバンク・グループも出資する。グリーンシルは、鉄鋼リバティ・スチール・グループなど英国の富豪サンジーブ・グプタ氏が率いるGFGアライアンス傘下企業の主な資金調達先だけに、連鎖倒産により国内で5,000人が失職する可能性もある。英政府は既に、リバティ・スチールと緊急対策の協議に着手している。BBC電子版が伝えた。
グプタ氏はコメントを発表していないが、GFGアライアンスは当面の資金は十分にあるとしている。クワーテング民間企業・エネルギー・産業戦略相は既に、リバティ・スチールのジョン・フェリマン最高経営責任者(CEO)と対策を協議しているが、同社の国有化は検討していないという。
リバティ・スチールは英3位の鉄鋼メーカーで、国内11拠点で計5,000人を雇用する。GFGアライアンス全体では、英国のほかフランスやオーストラリア、米国など世界30カ国で事業を展開し、計3万5,000人の従業員を抱える。GFGアライアンスは経営不振に陥った世界各地の鉄鋼企業の買収を通じて急速に事業を拡大してきた。その一方で、グリーンシルから多額の融資を受けてきたが、先にはグリーンシルへの返済を停止したと伝えられている。
フィナンシャル・タイムズが裁判所への破産申請書を元に伝えたところによると、グリーンシルは「資金難」を理由に金融大手クレディ・スイスから1億4,000万ドルの融資の返済を求められ、それが不可能であることから破産を申請した。
グリーンシルが主力とする「サプライチェーン・ファイナンス(SCF)」は、企業のサプライヤー(供給業者)への支払いを代行し、企業から後日に手数料を上乗せした金額の支払いを受ける金融サービス。グリーンシルは企業に事実上の融資を行う格好となり、これを債券化して投資家に販売することにより資金を調達していた。
クレディ・スイスは同社の債券に投資する総額100億ドルのSCFファンドを運営していたが、先に同ファンドの閉鎖を発表していた。直接の理由は、グリーンシルの顧客との取引の保険を手掛ける保険会社が同社との総額46億ドル相当の保険契約を拒否したことにより、同社の債券のリスクが高まったこととしている。ただクレディ・スイスはかねて、グリーンシルがGFGアライアンスのみを顧客とすることを懸念していたとされ、両社間の共依存状態が浮き彫りとなっていた。
グリーンシルは2011年に設立。ソフトバンクとサウジアラビアの公共投資基金(PIF)が主導するソフトバンク・ビジョン・ファンド(SBVF)が出資する。なお、同社は英国のキャメロン元首相を顧問として起用していることでも知られる。[日本企業の動向]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。