欧州連合(EU)は2月25日に開いたオンライン首脳会議(サミット)で、EU域内共通の新型コロナウイルスワクチン接種証明書の導入について協議した。夏までにデジタル証明システムの稼働を開始できるよう、欧州委員会が3カ月後をめどに共通基準や加盟国間のシステム接続方法を提案する。フォンデアライエン欧州委員長がサミット後の記者会見で明らかにした。
いわゆる「ワクチンパスポート」と呼ばれるこの証明書は、ギリシャが観光業の復活に向け提案したもので、スペインやイタリア、ポルトガル、キプロス、マルタ、オーストリア、エストニアなど、主に観光業への依存度の高い国が賛成している。一方、ドイツやフランスは、全EU市民がワクチン接種の機会を与えられないうちに導入すれば差別になるほか、ワクチンの変異株に対する有効性も確認されていないとして、慎重な姿勢を示していた。
フォンデアライエン委員長は「ワクチン証明書の使途は加盟各国が決めることだが、EUレベルでは単一市場の機能を守るために用いる」と説明。コードで表示されるワクチンの種類と最小限の個人データを含む証明書を加盟各国の医療システムで導入した上で、EUレベルで相互接続するとしている。こうした具体案の策定には最低3カ月はかかるとし「夏までの実施を求めるなら、加盟各国は早急に取り組む必要がある」と呼び掛けている。
同氏によると、米グーグルやアップルは既に世界保健機関(WHO)にワクチン証明書システムを提案しているが、EUは独自のシステム開発を目指す方針。
ミシェルEU大統領は、ワクチン証明書へのEU共通のアプローチについては、「デジタル化や世界保健機関(WHO)との調整など多くの課題が残る」とした上で「加盟国間の意見がまとまりつつあることが感じられた」と話している。インディペンデントによると、メルケル独首相は「デジタルワクチン証明書の必要性で意見が一致した」と話している。
なお、EU政策専門サイトのユーラクティブによると、証明書はEUで承認されたワクチンの接種を受けた人のみに発行され、新型コロナウイルスの感染歴があってもワクチン未接種なら受領できない見通し。
フォンデアライエン氏によると、EUはこれまでに5,100万回分のワクチンを調達し、域内で2,900万回分の接種を実施。欧州委は域内人口の70%に接種を施すことを目指しているが、現在の接種率は5%にとどまっている。この日のサミットでは、ワクチン展開を巡る協議も行われ、多くの加盟国がワクチンメーカー各社の供給遅延にいら立ちを示した。[EU規制]
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