欧州委員会は15日、インターネット企業など大手IT(情報技術)企業を対象とした「デジタルサービス法(DSA)」と「デジタルマーケット法(DMA)」を提案した。デジタル市場の競争を保護するとともに、オンライン・プラットフォームの運営企業にコンテンツへの責任を持たせる狙い。違反企業には多額の罰金が科される可能性もある。
欧州連合(EU)のデジタル規制が抜本的に見直されるのは、20年ぶり。欧州委でデジタル政策を担当するベステアー上級副委員長は両法案の目的について、「われわれユーザーがオンラインで安全な製品・サービスの幅広い選択肢を手にできるようにすることと、オフラインと同様にオンラインでも域内企業の自由で公正な競争を確保すること」と説明。また、ブルトン域内市場担当委員は、両法案により「向こう数十年のデジタル・スペースを整理する」としている。
DSAでは、ヘイトスピーチやテロ関連、違法な差別、児童ポルノ、プライベート画像の無断公開、オンライン・ストーキング、違法製品や偽造品の販売など、違法コンテンツを幅広く定義づける。オンライン・プラットフォーム運営企業は、これらを迅速に除去するか、違法コンテンツの存在を認知していなかったことを証明できない限り、こうしたコンテンツの責任を負うことになる。
また、オンライン広告の透明性確保に向け、広告主を明示することや、特定の個人が広告のターゲットとされた理由を明らかにすることも義務付けられる。
これらに違反した企業には、世界売上高の最大6%の罰金が科される可能性がある。また、欧州委への報告時に誤情報や不完全情報、誤解を招く情報を提供したり、立ち会い検査に応じない企業に対しては、世界売上高の1%の罰金が追加で科されるという。
一方、DMAは、デジタル市場の開放性と競争を守るもので、検索エンジンやソーシャル・ネットワーク、オンライン仲介などのサービスを提供する大手の「ゲートキーパー」企業に適用される。プレインストールされたアプリケーションのアンインストールを阻止するといった不当行為を禁止するほか、自社サービスに第三者企業のソフトウエアとの互換性を持たせるなど、企業が果たすべき義務も規定されるとみられる。
違反企業には、世界売上高の最大10%の罰金が科される。また、違反が繰り返された場合には、事業の売却といった構造的な措置が命じられる可能性もある。デジタル業界の変化の速さを考慮し、欧州委は市場調査に基づき新たな企業をゲートキーパーとして認定したり、禁止や義務の対象となる行為・サービスを新たに追加することを認められている。
両法案は今後、欧州議会およびEU加盟各国によって協議される。[EU規制]
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