スペイン政府は6日、クリーン水素戦略を閣議決定した。2030年までに再生可能エネルギー由来の電力を用いた電解設備の設備容量を最低4ギガワットに拡大し、環境負荷の低いクリーン水素12万5,000トン超の生産を目指す。政府が公表した戦略を元に、欧州連合(EU)政策専門サイトのユーラクティブが伝えた。
それによると、同戦略の投資総額は推定89億ユーロ。大半は民間企業が拠出するが、新規雇用を創出する事業には公的補助を給付する可能性もある。目標が達成されれば、30年までに産業向けに使用されている水素のうち、4分の1をクリーン水素が占める格好となる。政府はまた、水素を動力とする自動車や鉄道も本格展開させたい考え。
クリーン水素は電化が困難な産業分野の燃料や、再生可能エネルギーの貯蔵手段として注目されている。スペインでは、天然ガスの貯蔵施設や輸送システムが整備されており、将来的にこれを水素向けに転用することが可能。さらに、太陽光や風力など再生可能エネルギーに恵まれていることから、将来的にはクリーン水素の輸出も視野に入れている。
こうした中、電力大手イベルドローラは9月、クリーン水素開発の新事業部門を設立した。同社は7月、1億5,000万ユーロを投じて、欧州最大の産業用クリーン水素の工場を建設すると発表。水素の生産設備に加え、出力100メガワットの太陽光発電施設を併設する計画で、700人近くの新規雇用を見込む。
今回の戦略は、欧州委員会が7月に発表したEUのクリーン水素戦略を踏まえて策定された。同委は50年までに気候中立を実現する目標に向け、再生可能エネルギー由来の水素の域内生産量を同年までに段階的に増やす方針。これに向け、企業や投資家を巻き込んだ「欧州クリーン水素同盟」を発足させた。[EU規制][環境ニュース]
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