英政府は29日、仏製薬大手サノフィと英同業グラクソ・スミスクライン(GSK)が共同開発する新型コロナウイルスのワクチン6,000万回分の事前購入契約を結んだと発表した。取引額は明らかにされていない。英国は既にオックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカが共同で開発するワクチンなども確保しており、事前購入契約はこれで4件目となる。
英国は、今回の契約を含めて計2億5,000万回分のワクチンを確保したことになる。同国は5月、オックスフォード大とアストラゼネカのワクチン1億回分の供給を確保。その後、米製薬大手ファイザーと独バイオ医薬品会社ビオンテック(BioNTech)が開発を進めるワクチンを3,000万回分と、仏バイオ医薬品会社バルネバ(Valneva)のワクチン6,000万回分も確保していた。
シャーマ民間企業・エネルギー・産業戦略相は「英国の研究者は安全で効果的なワクチンの開発に空前の規模とスピードで取り組んでいるものの、成果は保証されていないのが現実」と指摘。「多様なワクチン候補への事前アクセスを確保することで、効果のあるワクチンを見出す可能性を高め、国民の命を守ることが重要」と話している。
サノフィは2種類のワクチン開発を進めており、うち今回の契約の対象となるのは、GSKのアジュバント(抗原性補強剤)技術を用いたもの。両社は9月に第1・2相臨床試験を開始し、年内には第3相臨床試験にこぎつけ、来年6月末までの承認獲得を目指している。両社のワクチンの年産能力は10億回分に上る見通し。
サノフィの新型コロナウイルス・ワクチンを巡っては、開発資金を提供する米国に優先的に提供すると同社取締役が発言。これを問題視した仏政府が、国内の医薬品業界に2億ユーロの支援を約束したこと受け、同社は前言を撤回した経緯がある。こうした中、経済力のある先進国がワクチンを独占し、貧困国への供給が後回しになることも懸念されている。
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