独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題を巡り、最高裁のドイツ連邦裁判所は25日、同社にオーナーへの補償を命じる判決を下した。同様の訴訟は国内で他にも約6万件提起されており、この判決がそのモデルとなるだけに、同社にとっては痛手となる。
同裁判所は、違法ソフトウエアが搭載されたVW車の購入者は、補償金を受け取る権利があると判断。車両を返却し、部分的な返金を受けることができるとした上で、返金額を算出する際には、車両の走行距離を考慮する必要があるとしている。
この訴訟は、2017年にVWのミニバン「シャラン」のオーナーの男性が起こしたもの。この男性は14年にディーラーから「シャラン」の中古車を3万1,490ユーロで購入したが、排ガス不正発覚を受け、返品と全額の返金を求め同社を提訴した。一審では敗訴したものの、控訴審ではVWが2万5,616ユーロの返金を命じられた。VWと男性は共にこの判決を不服とし、連邦裁に上訴していた。
連邦裁は今回の判決文で、「被告の行動は非倫理的と見なされる」との判断を示した。VWは、欧州では米国と異なり、当局が問題車両の運転を禁止したわけではなく、オーナーは経済的損失を被っていないと主張。また、当局の命令により違法ソフトウエアの改修も実施済みと訴えていた。しかし、連邦裁は5月上旬に示した予備的見解で、違法ソフトウエアの搭載車を販売することは損害賠償請求の十分な根拠となり得るとしていた。
なお、VWの排ガス不正問題を巡っては、これとは別に約45万人のオーナーが消費者団体VZBVを通じて集団訴訟を起こしていたが、こちらは2月に和解が成立。VWが各オーナーに対し購入額の約15%を支払うことで合意した。VWは最大8億3,000万ユーロを支払う見通しだが、1台当たりの補償額はモデルや年式により1,350~6,257ユーロと、今回の訴訟の請求額を大きく下回る。VWによると、集団訴訟に参加したオーナーは、新たに同社を訴える権利を放棄している。
VWの排ガス不正問題を巡る損失は、既に300億ユーロを上回っている。このうち大部分は、米国での損害賠償や罰金が占める。ドイツでは7月に、この問題を巡るVWディーラーや他の自動車メーカーに対する賠償請求訴訟の審理も始まる。[環境ニュース]
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