ロンドン・ヒースロー空港の第3滑走路の新設計画を巡り、英控訴院は27日、政府が地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」に基づいた英国の気候変動政策を考慮しなかったとして、これを違法とする判断を下した。反対派の主張を認めた格好で、建設計画の先行きが不透明となってきた。
英下院は2018年に建設計画を承認したが、これを受けて空港周辺の自治体やカーン・ロンドン市長、環境団体が英運輸省を相手取り提訴。英高等法院が昨年5月に反対派の訴えを退けたため、反対派は控訴していた。
控訴院のリンドブロム裁判長は「運輸相はパリ協定を考慮すべきであったが、計画の大枠を定めた国家政策声明(NPS)は法的義務に従って策定されなかった」として、反対派の主張を認めた。パリ協定に法的拘束力があるとの判断を示すのは初めて。政府は、計画はパリ協定の締結前に策定されたもので、同協定とは無関係と訴えていた。ただ控訴院は、反対派が訴えていた騒音や大気汚染、費用などの問題については高等法院の判断を支持している。
ヒースロー空港の運営会社は判決について、気候変動政策への配慮を巡る計画決定の点を除けば反対派の主張は退けられたとして、新滑走路の建設による経済効果を改めて主張している。政府は最高裁判所に上訴しない方針で、計画を白紙撤回するか見直すかの判断を迫られそうだ。
当初の計画では、新滑走路は2026年をめどに運用を開始し、空港全体の拡張計画は2050年までの完成を目指していた。ただ運営会社は昨年末、運用開始時期が2028年初頭から2029年後半にずれ込むとの見通しを示すとともに、空港の拡張に必要な最終許可を今年中に英民間航空局(CAA)に申請することを明らかにしていた。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。