ジョンソン首相は11日の閣議で、イングランド北部とロンドンを結ぶ高速鉄道「ハイスピード2(HS2)」の建設計画を進めることを承認したと発表した。4月にロンドン―バーミンガム間を着工する。国営事業会社によるプロジェクト管理のずさんさを認めた上で、HS2計画自体には価値があると強調。同計画の監督に専念する閣僚ポストを新設し、「同プロジェクトの規律を取り戻す」としている。
HS2計画は、第1期工事でロンドン―バーミンガム間、さらに第2期工事でバーミンガムからマンチェスターおよびリーズ間の2路線を敷設する計画。当初は総工費557億ポンドを予定し、第1期は2026年、第2期は2033年の完工が見込まれていた。しかし、計画遅延と予算超過が指摘されたため、昨年8月に政府が諮問委員会を設置。政府は同委の最終報告書に基づき、今回の決定を下した。同報告書によると、総工費は当初予算の約2倍の1,066億ポンド(2015年の物価ベース)に膨らむ見通しとなっている。
政府は、第1期工事を4月に開始する予定。2028~2031年の完工を見込み、総工費は350億~450億ポンドになるとみている。第2期工事については、バーミンガム―クルー間の第2a期工事の着工に向けた法案を、できるだけ早急に議会に再提出する方針。一方、残りの第2b期工事は見直しの対象となるため、リバプール―ニューカッスル間の新高速鉄道「ノーザン・パワーハウス・レール(NPR)」が優先される可能性もある。政府は、第2b期の路線とNPRの運営を新機関に任せ、「ハイスピード・ノース」の新ブランドで統一する計画だ。
HS2計画の透明性向上に向けては、専任の閣僚を任命し、定期的に議会に報告を行うとしている。また、HS2事業会社の役割を見直し、ロンドン・ユーストン駅の再開発事業は別会社に運営を任せるとしている。
HS2が開通すれば、ロンドンからバーミンガムまでの所要時間は1時間21分から45分に、マンチェスターまでの所要時間は2時間4分から1時間11分にそれぞれ短縮する見通し。
ジョンソン首相はかねてHS2計画には批判的だったが、与党・保守党は昨年12月の総選挙で、イングランド北部・中部の伝統的な最大野党・労働党支持者の票を奪って大勝しただけに、これらの地域が待望するHS2計画の行方を巡っては慎重な決断が求められていた。同計画は労働党も支持しているが、保守党内の一部議員はこれに強く反対していた。
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