欧州委員会は29日、第5世代(5G)通信網構築に当たり、安全保障上のリスクが高いと見なされる企業からの機器調達を限定するよう加盟各国に勧告した。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を念頭に置いた措置だが、同社の完全排除までは求めなかった。米国はかねて安全保障上の理由から各国に華為からの調達禁止を求めているが、この前日には英国も同社からの調達を限定的に認める方針を打ち出しており、EUもこれに続き米国の意向に反する格好となる。
欧州委は加盟各国に対し、通信機器の供給企業に対する安全保障基準を強化し、各企業のリスクを評価するよう勧告。その上で、高リスクと見なされた企業については、機密データを扱う「中核的」な部分への調達を禁止するなどの制限を課すよう呼び掛けた。
ただ、この勧告に法的拘束力はなく、華為からの5G機器調達を認めるかどうかは最終的に加盟各国が判断することになる。欧州委はこの勧告について、共通の方針を打ち出すことにより5Gネットワークの安全保障に向けたEUとしての決意を示すものと説明している。同委は加盟各国に対し、4月30日までにこの勧告に基づく措置をとるよう求めている。
華為を巡っては、中国政府の差し金によるスパイ行為の懸念が浮上している。華為はこうした疑惑を否定しているが、米国は政府機関が同社から通信機器を調達することを禁止。民間企業による調達禁止も検討しており、他の同盟国にも同様の措置を求めていた。
ただ、英国はこの前日、華為を含む「高リスク業者」からの5G機器調達を一定範囲内で認める方針を発表。5G網の中でも機密データを扱う「中核的」な部分や原子力発電所、軍施設などを擁する地域での調達を禁止し、5G網のそれ以外の部分でもシェアの上限を35%と定めたものの、同社の完全排除には踏み込まなかった。欧州委の今回の勧告は、英国の方針をほぼ踏襲した内容となる。[EU規制]
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