仏製薬大手サノフィは9日、糖尿病・心血管疾患分野の研究を打ち切ると発表した。同社の糖尿病治療薬「ランタス」は高い売り上げを誇り、20年以上にわたりインスリン市場で主導的な立場にあったが、特許切れで近年は売り上げが減少していたため、経営改革の一環として大きくかじを切る。
同社は9月に就任したスイス同業ノバルティス出身のポール・ハドソン最高経営責任者(CEO)の下、経営改革に取り組んでいる。同CEOは「イノベーションを生み出すことがより難しくなっており、難しい選択だが、当社は経営資源をよりチャンスのある分野へと注ぎ込まなければならない」とコメントした。
2018年12月期決算での「ランタス」の売上高は25億8,800万ユーロで、同社が手掛ける医薬品としては最も高かったが、前年比でマイナス28.4%と大幅な減収となった。同薬は糖尿病・心血管疾患部門の売り上げの6割近くを占めるため、厳しい判断を下した格好だ。
サノフィはこの日に発表した新たな経営方針の中で、今後は免疫系疾患や希少疾患、がんなどを扱う「専門ケア」、「ワクチン」、糖尿病・心血管疾患を含む「一般治療薬」の3部門体制に組織を再編すると説明。コンシューマーヘルスケア部門は独自の研究開発(R&D)体制と製造部門を持つ事業として独立させる方針だ。
また、成長が著しいアトピー性皮膚炎治療薬「デュピクセント(Dupixent)」やワクチン事業を優先していく計画。特に「デュピクセント」はピーク時には100億ユーロ以上の売り上げが期待されている。同薬の売上高は2018年に3.5倍超増加し、7億8,800万ユーロに上った。
ワクチンも、製品の多様化や市場の拡大、新製品の投入によって2018~2025年に1桁台半ばから後半の増収率を目指す。R&Dについては、RNA干渉治療薬など潜在的な可能性を持つ六つの開発パイプラインを優先する。
一連の経営改革により、2022年までに営業利益率30%、2025年までに32%以上を目指す。一方、糖尿病・心血管疾患治療薬の研究終了や調達の見直しなどを通じて、来年中に20億ユーロのコスト削減を行う。
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