伊自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏グループPSA(旧プジョー・シトロエン・グループ)は10月31日、対等出資による経営統合で合意したと発表した。数週間以内に拘束力のある覚書を締結する予定。統合後の新会社は世界販売台数が計870万台となり、独フォルクスワーゲン(VW)、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車連合、トヨタ自動車に次ぐ世界4位に浮上する。
FCAとPSAは経営統合により、全ての工場を維持した場合でも年間37億ユーロのシナジー効果が見込まれると推計。シナジー創出コストは28億ユーロで、効果の80%は4年後から達成できると説明する。また、2018年の業績(仏自動車部品フォルシアと伊同業マニエッティ・マレリを除く)に基づき、新会社の売上高は1,700億ユーロ近く、営業利益は110億ユーロ超を見込んでいる。さらに、北米や中南米市場に強みを持つFCAと欧州市場に強いPSAにより、新会社は各市場で高いマージンを確保できると強調した。
新会社では、会長にFCAのジョン・エルカン会長が、最高経営責任者(CEO)にPSAのカルロス・タバレスCEOが5年契約で就く。取締役会は11人で構成され、5人がFCAから、6人がPSAから指名される。新会社はオランダに親会社を置き、ユーロネクスト・パリ、ミラノ証券取引所、ニューヨーク証券取引所(NYSE)にそれぞれ上場する計画で、フランス、イタリア、米国にそれぞれ置く本社機能は維持するとしている。
FCAは取引に先立ち、株主に計55億ユーロの特別配当を実施する上、生産設備のオートメーション化やメンテナンスを手掛けるコマウ(Comau)の売却益を付与する予定。一方、PSAはフォルシアの保有株46%の売却益を株主に与えるとしている。これは、それぞれの企業価値を同等にする目的で、フィナンシャル・タイムズによるとコマウの売却益は2億~3億ユーロ、フォルシア株の売却益は30億ユーロと見積もられている。
FCAは5月、仏同業ルノーに対等出資による経営統合を提案。だが、ルノーに15%出資する仏政府が雇用維持などの条件を要求した上、ルノーが連合を組む日産自動車の支持獲得に向けて動いたことから、FCAは公表からわずか2週間弱で計画を取り下げていた。エルカン会長はその後、他社との提携を模索していることを明らかにしており、背景には同社が車両の電動化や排ガス量削減、自動運転技術などで他社に遅れを取っていることがある。[M&A]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。