欧州中央銀行(ECB)は12日開いた政策理事会で、ユーロ圏の市場介入金利(最重要の政策金利)を過去最低のゼロ%に据え置く一方、中銀預入金利をマイナス0.4%からさらに引き下げ、過去最低のマイナス0.5%とすることを決めた。利下げは3年半ぶり。加えて、11月1日から毎月200億ユーロ規模の資産購入を再開するとしている。
ECBはかねてフォワードガイダンス(時間軸政策)で、2020年6月末まで政策金利を現行水準に保つとしていたが、前回7月には、物価の伸び悩みを背景にこれを修正し、現行水準以下もあり得ると示唆。このため、今回はマイナス金利の深堀りや資産購入再開による一段の緩和が予想されていた。ECBの資産購入プログラムは、2018年9月まで毎月300億ユーロ規模、その後は毎月150億ユーロ規模で実施されていたが、12月末をもっていったん終了していた。
ECBは今回、「予想期間内のインフレ見通しが2%近い水準に確実に落ち着くまで、主要政策金利を現行またはそれ以下の水準に維持する」とのフォワードガイダンスを示した。
ドラギ総裁は記者会見で、「ユーロ圏経済は世界的な貿易の伸び悩みを背景に、予想以上に長期的な不振に直面している」との見方を示した。今回の利下げを巡っては、トランプ米大統領がいち早く「ECBは通貨ユーロの対ドル相場を引き下げ、米国の輸出を妨げている」と不満を表明したが、同総裁はこれについては、「我々の義務は物価の安定であり、為替相場に関する目標はない」とかわしている。
■成長率とインフレの見通しを引き下げ
ECBは併せて公表した四半期ごとの内部経済予測で、ユーロ圏の域内総生産(GDP)成長率が今年は1.1%になるとの見方を示した。6月時点の予想から0.1ポイント下方修正している。2020年は1.2%と、0.2ポイント引き下げた。2021年の見通しは1.4%で据え置いている。
一方、ユーロ圏の今年のインフレ率見通しは1.2%と、前回から0.1ポイント引き下げた。2020年は1%、2021年は1.5%と、それぞれ0.4ポイント、0.1ポイント下方修正している。
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