ビールで世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ、 ベルギー)は19日、傘下のオーストラリアのビール最大手カールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ(CUB)をアサヒグループホールディングスに売却することで合意したと発表した。取引額は160億豪ドル(112億6,400万米ドル)。ABインベブは売却益を過去の大型買収で生じた債務の縮小に充てる方針。アサヒにとっては過去最大の買収案件となる。
CUBはオーストラリア市場で半分弱のシェアを持ち、「ビクトリアビター」「カールトン」などのブランドを展開している。ABインベブは2016年のSABミラー買収を通じてCUBを傘下に収めていた。アサヒは今回の取引の一環として、ABインベブの保有ブランドである「バドワイザー」や「コロナ」、「ステラ・アルトワ」などのオーストラリアでの販売権も得る。取引は2020年第1四半期(1~3月)中の完了を見込む。
ABインベブは先に、香港でのアジア・太平洋事業「バドワイザー・ブリューイング・カンパニーAPAC」の新規株式公開(IPO)計画を市況などを理由に見送ったが、依然として上場を視野に入れている。CUBのような業績の急拡大が見込めない事業を売却したことで、将来的な上場に有利に働くとの見方がある。
ABインベブはCUBの売却益を債務の縮小に当てる方針。同社は業界2位だったSABミラー買収に790億ポンドを費やしており、2018年末時点の純負債は1,025億ドルに上る。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)有利子負債倍率は4.6倍に達しており、これを2020年末までに4倍以下、長期的には2倍まで引き下げる目標を定めている。
■アサヒの海外3極体制整う
日本国内の市場規模が縮小する中、アサヒは海外での事業拡大を進めている。2016年にはABインベブのSABミラー買収に絡み、イタリアの「ペローニ」やオランダの「グロールシュ」などを25億5,000万ユーロで取得し、その後、チェコの老舗ブランド「ピルスナー・ウルケル」やポーランドの「ティスキエ」などの中東欧資産も73億ユーロで製品ポートフォリオに加えた。今年に入ってからは英フラー・スミス&ターナーからエールビールの「ロンドン・プライド」などを取得した。
アサヒの既存事業を含めたオーストラリア事業のEBITDAは、CUBの買収により約1,000億円規模となる。これは欧州事業と同規模で、2,000億円規模の日本と合わせた3極体制を整えた形だ。
なお、CUBと並ぶオーストラリアの2大ビールメーカーの1社であるライオンは、キリンホールディングスが2009年に買収しており、同国の両雄を日本のメーカーが傘下に収めた格好。CUBとライオンを合わせた市場シェアは90%に達する。[日本企業の動向][M&A]
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