伊自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は6日、仏同業ルノーへの経営統合案を取り下げると発表した。フランスにおける政治的条件により、統合計画の実現可能性は低いと判断したため。実現すれば世界3位に躍り出る大型合併案だったが、公表からわずか2週間弱での幕引きとなった。
FCAは「統合案は説得力を持ち、変革をもたらす論理的な根拠を持っていると現在も強く確信している」とコメント。取引条件は全関係者に多大な恩恵もたらすよう慎重に均衡がとられており、広く受け入れられていたと強調したが、仏政府の影響により断念したことを説明した。同社は今後、独立した戦略を進めるとしている。
一方のルノーはFCAによる発表の直前、5日に開いた取締役会の結果、交渉開始の決定を先送りにしたと明らかにしていた。先送りは2度目で、筆頭株主である仏政府の意向を踏まえたもの。
フィナンシャルタイムズによると、仏政府はルノーが連合を組む日産との関係を尊重し、FCAとルノーの合併はこの連合の枠組み内に収まるものにすべきと進言したとみられる。その上で、日産からの支持を得るため、さらに1週間ほど待つ必要があると判断したもよう。なお、5日の取締役会では日産を代表する取締役2人が欠席したほか、仏政府と労組の代表者は交渉開始の信任票を投じなかったようだ。
FCAはルノーとの合併が実現した場合、販売台数が870万台程度となる上、既存のルノー・日産自動車・三菱自動車連合によるシナジー効果に、追加で年間50億ユーロ超のシナジー効果をもたらす見込みだと説明していた。一方で、ルノーに15%出資する仏政府が影響力の維持に向け、国内の雇用と工場が守られることなどさまざまな条件を要求。日産は両社の統合後も連合を維持することに前向きな半面、ルノーとの関係性を見直す必要があるとの考えを示すなど、状況が複雑化していた。[M&A][労務][日本企業の動向]
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