独自動車大手ダイムラーは28日、中国の自動車大手、浙江吉利控股集団(吉利集団)と折半出資の合弁会社を中国に設立し、超小型車ブランド「スマート」の次世代版の電気自動車(EV)を共同開発すると発表した。新モデルは中国で生産する方針で、2022年の販売開始を目指す。
吉利は昨年2月、ダイムラーの株式9.69%を取得して筆頭株主となっており、今回の合意は両社にとって車両生産に関する最初の合弁事業立ち上げとなる。なお、両社は提携の最初のステップとして、昨年に中国で高級車の配車サービスを手掛ける合弁会社を設立することで合意している。
スマートの合弁設立は年内を見込み、取締役会は両社から3人ずつの計6人で構成する予定。新モデルが市場に投入されるまで、現行モデルは仏北東部のハンバッハ(Hambach)工場とスロベニア南東部のノボメスト(Novo Mesto)工場で生産が継続される。ハンバッハ工場では将来的に、高級車部門メルセデス・ベンツのEVブランド「EQ」のコンパクトモデルを生産する予定で、工場設備や開発費に総額5億ユーロを投資する計画。
しかし、スマートの先行きを巡っては、依然として不透明感が残っている。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、スマートは欧州での販売が開始された1998年以降、21年間にわたって一度も利益を生み出せていないとみられている。ダイムラーは、同部門の業績を公表していない。欧州における生産コストの高さがネックとなり、年間の損失額は最大7億ユーロに上ると推算するアナリストもいる。
ダイムラーは2014年、スマートの開発コストの負担を軽減するため、仏ルノーと共通プラットフォームの開発で提携していたが、関係者によると、吉利によるスマートへの参画によってルノーとの協力関係は終了するとみられている。
吉利集団は2010年、米フォードからボルボ・カー・コーポレーション(ボルボ・カーズ、スウェーデン)を取得。吉利の運営能力を疑問視する声もあったが、ボルボ・カーズは昨年、年間販売台数が初めて60万台を超えるなど目覚しい復活を遂げている。ダイムラーとの提携強化により、自動車業界における吉利のグローバルな存在感がより高まりそうだ。[M&A]
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